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158話 訓練を始める前に一言

千秋、メイサ、力也は雪を囲んだ。

藤木は少し離れた台の上に立っている。

制御用のレバーやらダイヤルが付いている

機械の前で調整に余念がない。


「この訓練はあなた達の中にあるミトコン

 ドリアを活性化させ、ミトコンドリアを

 制御するための訓練です」


「意味がわかりませーん」


力也が手を上げた。


「あんたは黙ってなさい」


メイサが注意すると、力也は口を尖らせなが

ら頭を掻いた。


「前にも言ったけど、人の体はミトコンドリ

 アで作られています。そのミトコンドリア

 が集まりDNA細胞が出来、さらに個々の

 細胞が集まり、心臓やら肺やらと色んな臓

 器になっています」


「つまりミトコンドリアってやつが一番小さ

 いってことなのか?」


力也が小声で千秋に尋ねた。


「ま、少し違いますが、そう理解してくれた

 方がわかりやすいかも」


雪は苦笑すると


「本来ミトコンドリアはそれ自体では動きま

 せん。ところが今回のグール化でミトコン

 ドリアの一部が変異し、ミトコンドリア自

 身が意志を持つ細胞に変異しました」


「はーい、雪さん」


また力也が手を上げた。


「なんです、力也君?」


「結局訓練したら強くなれる、そうゆう事なん

 ですよね」


雪は少し考えて


「自立ミトコンドリアを制御できれは、確かに

 強くはなれますね」


「じゃあ、もう説明はいいから、やっちゃいま

 しょ、訓練」


力也はヤル気満々だ。


「ふーーん。ま、それもそうね」


雪は力也に笑いかけると


「あなた達はどうなの?」


千秋はメイサと顔を見合わせた。

確かに小難しい話を聞かされても、理解できるの

はメイサぐらいだろう。千秋にしても漠然とは雪

の言わんとしてる事はわかるが、決して理解はし

ていない。


「私はかまわないけど」


千秋はそう言ったが、メイサが手を上げた。


「一つ質問していいですか」


メイサは真っ直ぐ雪を見据えた。

その目は科学者の目になっていた。

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