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154話 銀のネックレス

第三アジトに着くと、藤木は各自を個室に案内

した。


どこかのオフィースビルを改築したのだろ。

いくつもの個室が上階には用意されていた。

 藤木の話では、昔はこの基地でよくグールに

なりたての研修生を訓練したが(もう用がなく

なった)ので今は宿泊施設として使用している

と言う。


今日も少人数しかこの施設にはいない。


千秋は部屋に入ると直ぐシャワーを浴びた。

鏡に映った自分の身体を、丹念に調べた。


別に意味はない。

何となく、調べてみたくなったのだ。


母の事といい、最近の自分の力の増大といい、

何かが変わっているのではと、フト思ったの

だ。


しかし外見には何も変わったところは見当たら

ない。


シャワー室から出て長い髪を乾かしながら藤木と

雪の会話を思い出した。


雪はアジトに着くと直ぐ三人の訓練を行いたいよ

うだったが、藤木がやんわりたしなめた。


藤木は、まず、メイサに疲れていないかと聞き、

メイサが「クタクタ」と答えれば、雪としても

強引に訓練を始めるわけにはいかなかった。


千秋も実は疲れていた。

車での移動は疲れる。

そのうえここ最近めまぐるしく環境が変わる。

変化の速度に、感性が追いついて行かないのだ。


髪を乾かしながら、テーブルの上に置いたネック

レスを見た。

毎日首から下げているネックレスだ。


一見銀貨のようであるがよく見れば、それが平た

いボタンであることがわかる。


「人は変われるんだ」


藤木が叫んだあの言葉が、耳について離れない。

ネックレスを手に取るとソット目を閉じた。


ネックレスを掴み、目を閉じれば条件反射のよう

に(あの記憶)が蘇ってくる。


記憶はセピア色に減色され、銀色の縁に囲まれた

スクリーンに最初はぼやけて、やがて鮮明な形で

蘇ってきた。


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