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152話 瞬発DNA

「幽厳村正があれほど強くなっていれば、私達

 も計画を早めないといけないと思うの」


「だから訓練を?」


藤木は前を向いたまま雪に尋ねた。

車はカーブの多い坂道に差し掛かっていた。


「千秋とメイサ、この二人は今のままじゃダメ、

 元木一派にも簡単にねじ伏せられてしまうわ」


「だからと言って、あの訓練は危険です」


「危険だけど、得る効果も大きいわ」


「もし、ミトコンドリアに取り込まれたらどう

 されます」


「それまでの能力だったと、私が始末します」


「ミトコンドリアに取り込まれたグールは、簡単

 には倒せませんよ」


「倒します」


言うと雪はチラリ後ろを見た。

三人は軽い寝息をたて寝ている。

力也に至っては豪快なイビキをかいている。


「そのイビキの主はどうなんです、やはり訓練を

 されるんですか」


「藤木君は力也君の事どう思う」


雪が思惑ありげに藤木を見た。


「うーん。わかりません。弱くはありませんが、

 決して強くもないし」


「伊集院博士が面白いことを言ってたわ、おまけ

 で付いてきた子がプラスアルファの力を出すD

 NAの持ち主だって」


「なんですか、そのプラスアルファのDNAって」


「ミトコンドリアの性質を調べている過程で、人の

 瞬発力についてのメカニズムが解明されてね、瞬

 発力を出すDNAがあるんだけど、それを増殖で

 きるタイプの人がいるらしいの」


「グールでなく人間で、ですか」


「グールも人間も同じよ。グールになると、人とし

 てのDNA操作ではなく、直接ミトコンドリアを

 操作するから人のDNAはあまり関係なくなるん

 だけど、瞬発力DNAはグールになっても、ミト

 コンドリアには左右されないみたいなの」


「そのDNAが彼にはあると言うのですか」


雪はうなずきながら


「それも半端ないほど。ミトコンドリアを凌駕する

 ほどの瞬発DNAがあると、伊集院博士は仰って

 いたわ」


「ならば、彼もある意味、異種」


「そう。だからこそ、試してみたいの、彼があの訓

 練によってどう変わるか」


「雪さんやはりやめましょよ、あの訓練は」


「あら、どうして?」


「怖いんですよ、雪さんの、その研究者モードに入

 った時の、のめり込みが」


「私の中にも研究者瞬発DNAがあったりして」


雪はそう言うとケラケラと笑った。

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