147話 また何か企んでいるのですか
研究所に戻った五人はすぐさま出発の準備を
始めた。
北王路ゆり母娘を救出に向かうためにだ。
「あれ?車で行くんですか」
力也が車を用意している藤木を見て雪に尋ねた。
「まさか歩いてはいけないでしょ」
力也の機嫌はすっかり直っていた。
雪と藤木には大袈裟に土下座までして謝り、二
人を困惑させ、メイサには足を蹴られながらも
許してもらっていた。
「雪さん達が、俺達を研究所に運んでくれた時
のように、こう、空をプッーと運んでくれた
ら」
「ああ、舞空術の事ですか」
車を四人の近くまで運んできた藤木が笑いなが
ら近づいてきた。
「舞空術は体力の消耗が激しいんです。第三ア
ジトはここから結構遠いところにありますか
ら、さすがに人間をそこまで運ぶのは疲れま
すから」
藤木が真面目に力也の問いかけに答えてくれた。
「第三アジトって、元木博士の所に直接行くん
じゃなかったの?」
北王路母娘をさらった相手だと言うのに、メイ
サは元木博士に会えるのを楽しみにしているよ
うだ。
「第三アジトで少しあなた達三人の能力をアッ
プしてみる訓練をするんです」
「訓練!」
メイサが悲鳴を上げれば
「その訓練をすれば強くなれるのか」
力也の顔が輝いた。
「訓練と言っても、大したことありませんよ」
まずはメイサに答え
「勿論、強くなれますよ、潜在能力をアップする
訓練ですから」
力也にも答えた。
雪はただ、微笑んでいるだけだ。
「また何か企んでいるのですか」
千秋は雪の耳元で、笑いながら尋ねた。
「企むだなんて、人聞きの悪い」
「幽厳の力を見て思いついたんでしょ」
雪は目をしばたたせた。
千秋を見ると
「今言ったこと、千秋ちゃんの直感なの」
「雪さんを見てたら、ふとそんな感じがして」
「千秋ちゃん」
突然雪の表情が険しくなった。
「もし、もしよ、仮定の話だけど、今後何かあなた
の体に変化の兆しが見えたら、逐一私に教えてほ
しいの」
「えっ?」
今度は千秋の表情が険しくなった。




