146話 俺って、そんなに弱っちいのかなあ
千秋の怒りは力也を見てさらに増加した。
人などグール化が始まって以来何人も死んでい
る。
食べられもしている。悲しみ怒るのは勝手だが
理性を忘れる程怒らないでほしい。
皆を危険な目に合せておいて、助けられたくせ
に、力也が怒る理由などない。
怒るのはこっちだ。
千秋は力也の耳を摘まんだ。
摘まんで声を張り上げた。
まるで母親が子供を叱るように。
「いい、聞きなさい、力也が仲間の安否を知り
たいと皆が止めるのも聞かず勝手な行動をし
たのよ」
「だから俺は一人で行くと言ったんだ」
「黙りなさい!」
千秋はビシャリと力也の言葉を遮った。
「力也が勝手に私達を守ると言っておいて、結局
力也が皆を危険な目にあわせたのよ」
「だから俺は一人で」
「放っておけると思うの私達が」
「・・・」
「力也が私達を仲間だ、自分の命を賭してまで守ろ
うと言うのを聞いて、私達が力也の窮地を黙って
見ていられる人間だと、あんたは思っているの」
力也は黙ったままだ。
「力也を一人で行かせることは、力也が死ぬのを
黙って見過ごすって事と同じことなのよ」
「俺は、ただ」
「メイサも雪さんも、藤木さんも、ミンナわかっ
ていたのよ、力也が仲間の所に行けば幽厳、も
しくはその仲間が張っていると」
「ただ・・」
「黙りなさいと言ったでしょ」
力也はうなだれた。
紫の陽炎も引き、背も少し丸くなっている。
「力也の命を守る為皆、危険を承知であなたと行
動を共にしたのよ」
「俺って、そんなに弱っちいのかなあ」
ぼそっと呟く力也に
「力也が弱いんじゃないの、幽厳村正が強すぎる
のよ、力也も感じたでしょ、幽厳のあの強い邪
念エネルギーを」
「あいつなんであんなに強くなったんだ」
やはり力也も幽厳村正がとんでもなく強力になっ
たことを感じていたらしい。
「あの雪さんですら、負けを覚悟したのよ」
「嘘だろ」
力也が目を剥いた。
「幽厳が強くなった理由はわからないけど、とに
かく今は幽厳村正には近づかない方がいいわ、
私達がもっと強くなり、幽厳村正と対等に渡り
合えるようになった時、その時勝負すればいい
の、それまでは、悔しいでしょうが、とにかく
我慢するの、我慢して、強くなるのよ、今より
も、もっと、もっと」
「俺強くなれるかなあ・・・」
「馬鹿!なれるかなあじゃないの、強くなるのよ
絶対」




