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145話 黙りなさい

力也の機嫌はまだ直っていなかった。


千秋と雪が藤木達の前に現れると、藤木が慌て

て雪に近づいた。やはり心配だったのだろう。

嬉しそうに雪と手を握りあっている。


千秋の肩を引っ張って、メイサが耳元に口を寄

せた。

少し表情が険しい。


「力也の機嫌が直らないけど、どう扱う、あい

 つの取り扱い方法千秋が一番詳しいんでしょ」


千秋は力也を一瞥した。

ブツブツ独り言をつぶやきながら拳を握りしめ

ている。


時折紫の陽炎が身体から漂っているので、確か

に機嫌は悪いようだ。

メイサの冗談も通じていないようだ。


「藤木さんにその八つ当たりしてるから、私、

 もう止めるので疲れちゃったわ、後頼むわよ」


本当に根が尽き果てたのだろう。

メイサはそのまま藤木と雪の輪に入り込んで行

った。


千秋はゆっくり力也の横に並んだ。

全員、研究所に向かってゆっくり歩いている。


チラリ千秋を見た力也はすぐ視線を外すと、また

拳を握りしめ「幽厳の奴殺してやる」千秋に聞こ

えるように呟いた。


「今のあたじゃなかないっこないわよ」


「なんだと!」


力也は立ち止まると大声を上げた。


「あ、みなさん先行っててください、この駄々っ

 子に今から私お仕置きしますから」


微笑んで見せる千秋の横で、瞬間力也の背中から

又紫の陽炎がわいた。

本気で怒っているようだ。


「千秋だろうと俺は許さんぞ」


「あんた馬鹿じゃないの」


「何が馬鹿なんだ!」


「雪さん殺されそうになったのよ」


千秋の言葉の勢いに力也は黙った。

千秋の方が力也より怒っているようだ。


「これが私からの最後の忠告と思いなさい、い

 い、ちゃんと聞くのよ、今後勝手な真似した

 ら私達とは別行動取ってくれる、力也のせい

 で誰かが死ぬの、私見たくないから」


「俺がいつ・・・」


「黙りなさい!」


千秋は大声で怒鳴った。

力也に見せる初めての本気の怒りだ。

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