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144話 ブラックボックスのミトコンドリアを持つ女

化け物、幽厳村正が作ったバリアを千秋は無

効化すると言う。

雪には信じられないが、多少の興味もある。

千秋の(異種)は雪の異種と少し違う。


伊集院も元木も、千秋に、より興味を持ってい

る。

幽厳村正もまたそうだ。


千秋の中に眠る異種ミトコンドリアは何かが違

うらしい。

雪には詳しいことがわからないが、伊集院も、

元木も、とにかく千秋の中に眠るミトコンドリ

アにグール化の秘密が隠されていると考えてい

る。


千秋は人類の救世主に、あるいは破壊者になる

やもしれないと伊集院は冗談とも本気ともつか

ぬ口調で雪に言ったことがある。


だからこそ千秋は観察し続ける必要があると。


そんな千秋ならば本当に何とかしてしまうの

かもしれない。

(乗ってみよう!)

雪は千秋に作戦開始の合図を送った。


雪からの合図を待っていたかのように千秋は

動いた。

それは、まさに一瞬だった。


千秋は幽厳村正に襲いかかると、幽厳村正は

反射的に体をよけた。

避けた体の影に千秋は素早く溶け込むと、そ

のまま気体になり幽厳の体を貫いた。

本体ではなく影にだ。

幽厳の影から幽厳に入り込んだのだ。


「嘘・・・」


雪は目を見張った。

始めてみる光景だ。

影から侵入するなんて。


瞬間、幽厳村正の体が固まった、

その一瞬を突き、千秋が戻って来た。

その素早さはまさに瞬間移動だ。


「今よ!」


千秋は雪に叫んだ。

もとより、千秋の戦いを見ていた雪は千秋の

合図にすぐ反応した。


バリアが解けたのはホンの一瞬、その間隙を

ぬい雪は幽厳の前から、千秋と共に消え失せ

た。


「あははは、あははは」


自分の目の前から、瞬間消え失せた雪と千秋

に幽厳は驚くより、喜びを感じていた。


もとより最初から殺す気などない。

雪もメイサも、そして千秋も、まだまだ成長

させねば喰う意味がない。


それにしても雪も雪だが、千秋の進歩はめざ

ましい。

幽厳村正自体、飛躍的な能力の増大を得る決

心をしたのも千秋とメイサを奪われたからだ。


昔の幽厳村正のままでは、どうにも太刀打ち

できない。

取り込まれようと、とにかく強くなる必要が

あった。


千秋と、雪と、メイサ、この三人は特別だ。

世界中で、異種ミトコンドリアを持つものの

人数と所在は全て把握している。


幾百といるが、その中でさらに特別な因子を

持つのが十数名、そして唯一解明できない、

ブラックボックスのミトコンドリアを持つもの

が唯一、一人、それが栗原千秋、彼女だけなの

だ。


栗原千秋は謎だ。

誰にも解明できない、いや中を覗けないミト

コンドリアを持つ唯一の人間。


成長したあかつきには、千秋はどんなグール

になるのか、幽厳村正は楽しくてしかたなかっ

たのだ。

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