142話 今から私が幽厳に飛びかかります
雪の力をもってしても、幽厳村正が張ったバリ
アは破れそうにもない。そのバリアを千秋は一
瞬だが破ることができると言う。
雪には信じられなかった。
確かに千秋の能力の発達はめざましい。
しかしいくら何でも、あのバリアは壊せない。
しかし千秋を見れば本気で壊す気でいる。
どちらにしても幽厳村正の能力も半端じゃない。
雪が知ってる昔の幽厳村正の能力とは雲泥の差だ。
しかもパワーとスピードも違う。
その自信が、幽厳の表情にも表れている。
ここから逃げないと、幽厳が言うように食べら
れてしまう。
雪だけならまだしも、雪がやられれば次は千秋
だ。
千秋を今すぐ食べはしないだろうが、いずれに
しても捉えられるのは間違いない。
なんとしてもそんな事態は避けなければならな
い。
力也をここに来させたのはあるいは失敗だった
のかもしれない。
自分の周りに立ち向かえる能力者がいない事に
よる奢りが出たのかもしれない。
雪の脳裏にそんな後悔もちらついたが、今更
そんな事を思っても仕方がない。
物事は前向きに考えねば。
とにかく来ることによって、有益な情報が手
に入った。
幽玄村正は完全に異種ミトコンドリアに取り込
まれている。
この情報は貴重だ。というより恐怖だ。
今現在、幽厳村正を倒せるものは、個人では地
球上に一人もいない事になる。
異種ミトコンドリアの能力は計り知れない。
その能力を身につけたグールはまだいない。
幽玄が身につけてしまった。
というより、取り込まれたのだが。
なんらかの対策をたてないと、伊集院一派も、
元木一派も、そして人類、半魚人も全て幽厳村
正の思惑で破滅させられる可能性も出てきた。
雪は千秋と、幽厳村正を見た。
ここは千秋を信じるしかない。
雪だけの力でこの苦境を乗り越えることは難し
い。
「じゃあ、その作戦で行くわ、どうすればい
いの」
決断した雪に千秋はのんびりしたものだ。
緊迫感がまったく感じられない。
「こんな時になんだけど、雪さんありがとう、
助けに来てくれて」
千秋はまず雪に礼を言うと
「今から幽厳に私が飛びかかります、そしてバ
リアを無効化させたら直ぐ雪さんに抱き付き
ますから、すぐ瞬間移動してください」
「なんですって!」
雪は千秋の言葉に呆れ思わず口を開けてしまっ
た。




