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141話 相変わらず強いな、雪

雪に飛びかかって来た幽厳村正の姿は途中で忽

然と消えた。


狼狽える雪の足元から突然黒煙が吹き出すと、

それはやがてキャラメル状の液体になり雪の体

をとぐろ巻きにしようとした。


瞬間雪の体が消えるとその上空に現れ、投げ網

を液体に被せた。

液体に投げ網が覆いかぶさると、網は雷のよう

な光線を発し液体を揺るがせた。


一瞬液体の動きが止まったかに見えたが、液体

は固い鋼鉄の刃に変身し網を粉々に引きちぎっ

た。


雪が地上に降りると、幽厳村正も元の姿に戻った。


「相変わらず強いな、雪!」


「それが異種ミトコンドリアの力なの」


「異種は余計だ、言うならば正統と言って欲しい

 な」


「早くそのミトコンドリアを倒しなさい、さもな

 いとあなた自身が無くなってしまうのよ」


「フン、どうせ伊集院あたりに吹き込まれた情報

 だろうが、己さえ強ければ取り込まれることは

 無い、俺の場合は取り込まれたふりをしている

 だけだ」


「取り込まれているふりって、人を食べるのもフ

 リなの」


「豚の肉も人間の肉も大差あるまい、肉は同じ肉

 だ」


「そう思えることが取り込まれた証拠だとは思わ

 ないの」


「雪、もういい、俺がお前を喰ってやる、俺の中

 で俺と共に生きろ、俺と共に宇宙の覇者になろ

 うじゃないか」


「宇宙の覇者?とうとう本音を吐いたわね、幽厳

 言いなさい、誰なの、誰があなたのバックに付

 いているの」


幽厳の顔が歪んだ。

図星を言い当てられたのだろうが、慌てて表情を

戻すと


「俺にバックなどおらん、おれは一人だ、一人で

 最強な男だ」


幽玄は両方の手を剣に変えると、ゆっくりと雪と

の間合いを狭めてきた。


その時、ふっと、雪の横に千秋が駆け寄った。

耳元に手を添えると


「逃げましょ、私があのバリアを一瞬無効にしま

 すからその隙に私を抱いて瞬間移動してくださ

 い」


「破れるの?あのバリアを?」


「一瞬なら」


「ホント?」


雪は半信半疑のようだ。

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