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13話 絶対絶命

力也が振り下ろした大鉈を赤グールは触手を伸

ばすと、ぐるり搦め取り、更にもう一本の触手

で力也の身体を巻き取るとそのままグルグル空

中で円を描き、屋上の塔屋の壁に叩き付けた。


力也は壁の中にめり込んでしまった。


その威力に幽厳と千秋は目を見合わせた。

力也の身体も心配だが、まずはその威力の凄ま

じさに圧倒されたのだ。


紫に力を増強させた力也は無敵だった。

その力也をいとも簡単に壁にめり込ませたパワ

ーは従来のグールの比ではない。


「千秋、お前はあの女を連れて逃げろ」


千秋は一瞬躊躇したが、すぐ幽厳の意図を理解

した。

理解すれば千秋の行動も素早い。


赤ん坊を抱いた女の手を引き、逃げようとする

千秋の前を白グールが遮った。


「甘すぎるわよ」


柔らかな女の声だ。

女だとわかると、千秋の闘争心に火がついた。

男に負けるならまだしも、女には負けたくない。


「どきなさい」

「どかせてみなさいよ」


白グールは余裕たっぷりだ。

三人の実力を推し量り、千秋達がどうあがいて

も勝てない事を見切ったからだろう。


白グールの余裕を見て、一瞬絶望感に襲われた

千秋だったが、つないでいる女の手の感触が戦

闘意識をかろうじて保たせてくれていた。


このままでは、この女性が、いや赤ちゃんまで

がグールの手に落ちてしまう。それだけは何と

しても阻止しなければ。たとえこの身がどうな

ろうとも・・・。


「どきなさいってば」

「だからどかせてみなさいよ」


千秋は歯ぎしりをした。

血が滲むのではないかと言う程強い歯ぎしりだ。


このまま白グールに立ち向かったところで勝算

はない。

紫化した力也ですら一瞬でやられた。

なんとかしなければ。


眉間、眉間が弱点だと見切ったが、幽厳が言う

ようにわざと誘っているのかもしれない。


どちらにしても八方塞がりだ。

どうしようもできない。

どうすればいいんだ。


壁に叩きつけられた力也を見たがピクリともし

ない。

確かに壁にめり込んではいるが、あの程度で死

ぬような力也ではない。


幽厳はと見れば、赤グールと対峙したまま睨み

あっている。


この中で手の内を見せてないのは幽厳だけだ。

その分赤グールも慎重になっているのかもしれ

ない。


どうすればいいのだ・・

一体どうすれば・・

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