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135話 幽厳村正現る

「力也どこなのよ」


「だから久楽町だと言ったろうに」


「ここが久楽町よ、久楽町のどこかと聞いて

 いるのよ」


まるで掛け合い漫才だ。

メイサが言えば、力也が答える。しかし会話が

ちっとも噛みあわない。


方向音痴の話は冗談で言ったが、こうなって見

ればついてきてよかった、千秋は本気でそう思

った。


力也の方向感覚は、ひどいどころの話じゃない。

目的地にちっともつかない。

同じ道を何度も行き来し、首をかしげ、メイサ

と罵り合う

その繰り返しだ。


「タバコ屋の角を回った小汚いビルの中なんだ

 がなあ・・」


「あんた馬鹿じゃないの、タバコ屋ってどこに

 でもあるでしょうに」


「うるさい、もうすぐ着くから少しは黙ってろ」


「あんたの後ついていたら、婆さんになっても

 つけないから」


「いいかげんにしないと」


「なによ」


「なんだよ」


「もう二人ともやめなさい、大人げない、メイサ

 も少し黙って力也に探させてあげなさいよ」


千秋が二人の中に入って仲裁をしたが、ふと目線

を上げて身が固まった。


千秋の異変に気が付いたメイサ達は、千秋の視線

の先を見て同じように縮み上がった。


「幽厳村正!」


ビルの影から幽厳村正がこちらを見てにやけている。

千秋はあたりを見渡したが幽厳村正以外誰もいない。


幽玄はゆっくり立ち上がると首をコキコキ傾けた。


「遅かったじゃないか」


仁王立ちする幽厳村正の醸し出す雰囲気は前と全く

違って見えた。

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