128話 自立ミトコンドリア
雪に持ち上げられたらメイサの頭脳は止まら
ない。
「本来ミトコンドリアは細胞を構成する最小
のものでしょ。そのミトコンドリアに自立
核が存在したらややこしくて人間動けない
んじゃないの」
「そうなの、そこがグール化の突然変異と大
きく関係してるの」
「じゃあ、グールになったのは」
「ミトコンドリアに自立核が発生した人がグー
ルになったの」
しばらく考えていたメイサは
「何かの原因でミトコンドリアが自立核を持っ
たミトコンドリアに変異し、それがいわゆる
グールと言うの」
「人の細胞は動植物を食べることで活性化され
るんだけど、自立ミトコンドリアには人間の
DNA細胞が必要なところまではわかってい
るの」
「だからグールは人を襲って食べるわけなんだ」
「厳密に言うと、人間の核で動いている間は人間
なんだけど、自立ミトコンドリアが人間核を制
御しだすとグールになり、人を襲うの」
メイサは自分なりにグール化の秘密を理解したよ
のか、一人頷いている。
「それで符号が合うわ。自立ミトコンドリアは月
に一度人を食べないと死滅するんだ」
「そう、その時莫大なエネルギーが発生し人の核
を制御不能にし人を襲うの」
雪が悲しそうな顔でうなずいた。




