125話 私も知らないの
「何かあったんですか」
メイサと力也も近づいてきた。
「やられちゃいました」
「やられたって?」
「さきちゃんを奪われました」
さきとはゆりの子供で、雪たちがグールの襲撃
から救いだした親子の事だ。
「最初から狙いはさきちゃんだったみたい。攪
乱してその隙に奪うつもりだったようね」
「じゃあ、さっきの襲撃は」
「私達を油断させるための襲撃」
「誰がさらったの?」
「勿論元木博士一派よ」
言いながらも雪はさほど悔しそうではない。
「でね」
千秋に顔を近づけると
「あなた達にお願いがあるの」
千秋は雪の顔を払いのけると
「お願いって、最初のお願いも聞いていない
のに」
千秋は苦笑した。
メイサや千秋をここに連れてきたのは幽厳村正
から救い出したというが、いかにも不自然な理
由だ。
他に何か理由があるはずなのだが、その理由も
聞かぬまま、又新たなお願いがあるという。
「とにかく来てくれる」
雪は、ゆっくりと歩き始めた。
後を付いて来いと言うのだろう。
千秋は何も言わずその後を付いて行ったが、メ
イサは千秋に並ぶと
「ねえ、ねえ、あの雪って人何者なの」
メイサは雪の事を何も知らない。
不思議がるのも無理はない。
「私も知らないの」
よく考えれば、千秋も雪について何も知らなか
った。
強くて美しくって、グールであること以外。




