121話 あ・・あのう
気が付けば千秋は藤木の横に立っていた。
その気配を察したのか、藤木は手早く隊員た
ちに指示を出すと振り返った。
「何か御用で?」
横顔より正面の方がより綺麗な顔立ちだ。
「あ・・あのう」
無意識で藤木の近くまで来てしまった千秋だっ
たが、こうもまじまじと藤木に見つめられると
急に恥ずかしさに襲われて来た。
藤木があの時のかれであるか、聞こうとしたの
だが、いざとなると聞けない。いや、どう聞い
たらいいのかわからない。
第一あんなつまらないこと、藤木が覚えている
とは思えない。
千秋にとって特別なことであっても藤木にすれ
ばなんでも無いことだ。
覚えているはずがない。
聞いても知らないといわれるだけだ。
千秋はどうしても聞く事ができなかった。
「千秋さんはどうして相手の弱点がわかるんで
すか」
藤木の方から質問してきた。
「え、私、そんなこと・・・」
「千秋さんに透視があるのではと、我々の間で
は噂になっていましたが、見えるのですか、
相手の弱点が」
「そんな、見える訳ありません」
「でも現実にいつも千秋さんは的確に相手の弱
点を見抜いていらっしゃったでしょ」
藤木は声まで甘い。
「それは・・・」
確かに言われてみればそうだ。、
千秋自身はさほど気にしていなかったが、ハ
ンター時代の戦闘方法は、まず力也が敵と戦
い、その戦いの中から相手の弱点を見つけそ
れを力也に教え倒すのが、幽厳村正の作戦だ
った。
幽玄は千秋が前衛に出て戦う事を決して許さ
なかった。
千秋が女だから、敢えて後方に控えさせてい
たのだと思っていたが、そうではなかったの
かもしれない。




