119話 時を戻さねば
千秋が時を止めたと伊集院は言った。
ありえない。
そんなことができるはずが無い。
思いながらも確かに時は止まっている。
動いているのは、メイサと伊集院、それに雪と
千秋の四人だけだ。
「私は時を止まれ!なんて命令出していませ
ん」
「厳密に言えば止めるきっかけを作ったのは
私ですがね」
伊集院は頭を掻きながら
「情報は行きましたか、千秋さんの頭の中に」
「いいえ」
千秋はかぶりを振った。
何も目新しい情報は入ってきていない。
確かに一瞬、黒く薄気味悪い(情念)のような
感覚が襲ってきたが、身体の中の何かがそれを
蹴散らした感覚がある。
「やはり、まだまだ、未完成ですね」
伊集院は雪を見た。
「しかたないですよ、能力の開花はついさっき
ですから」
「強すぎるんだろうな、彼女達のミトコンドリ
アは」
「ちょっと、何よ、そのミトコンドリアが強い
とかなんとかって話」
メイサが口を尖らせている。
科学者として自分を外した話はしないで欲しい
と、そんな顔だ。
「おっと、時を戻さねば」
伊集院はそう言うと、指をパチンと鳴らした。
すると先ほどまで固まっていた面々が動き始めた。
「時の止め過ぎは、ミトコンドリアの増殖を引き
起こすんです」
伊集院がニコリと笑いながら千秋を見た。
「つまり、若さを失うと、そういう意味」
雪が横から付け足してきた。




