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118話 時が止まっているんです

あまりに伊集院が近くに来たので思わず下が

ろうとするのを伊集院が止めた。


「怖がらなくていいです」


ゆっくり千秋の手を取ると、その手にもう片

方の手の平も重ね合わせた。


「ゆっくり、ゆっくり、深呼吸してください」


「あ、、あの」


千秋は手を戻そうとしたが、手はがっしりと

伊集院に掴まれ抜けない。


「知りたいんでしょ、あなたがグールなのか人

 間なのか、言葉で伝えるのは難しいですが、

 気の伝道で伝えることはできると思います」


手の中がだんだん熱くなって来た。

厚くなると同時に、千秋の念が手に集中し始める

と、その念に伊集院の念が絡みついた。


「嫌!」


千秋は小さく叫んだ。

小さな真実のかけららしきものが千秋に笑いか

けると、突然大口を開け千秋を飲み込んだ。


真実らしき津波が千秋を一気に襲うと、千秋の核

がつるりと剥けそれを真実らしき煙が取り巻いた。


ダメ、取り込まれる、思わず目を閉じたその時、

千秋の核が黒煙を上げると、真実らしき煙を弾き

飛ばした。


フット、気付くと、伊集院が微笑みながら千秋の

前に立っている。

つないでいたと思っていた手はいつの間にか離され、

力也は固まったままだ。


「時が止まっているんです」


もう一度周りを見渡せば、藤木も、銀スーツの男

達も皆微動だにしない。


「何、どうしたの?」


メイサが驚いて周りを見ている。

メイサには効かなかったようだ。


「わかった、これがあなた達が特殊である理由な

 の」


雪も動いている。


「伊集院さんは時を止めることができるの?」


伊集院は首を振ると


「いいえ、千秋さん、この時はあなたが止めたんで

 すよ」


「私が!」


千秋は思わずメイサと顔を見合わせた。

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