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116話 ミトコンドリア核

「私達のどこが危険なのよ」


メイサは雪に詰め寄った。


「幽厳村正はあなた達が持ってるミトコンド

 リア核の特殊性を知ってるからよ」


「ミトコンドリア核?」


千秋はメイサを見た。

メイサも首をひねっている。

ミトコンドリア核の特殊性については知らな

いらしい。


「この研究所には全世界のグール及び人間の

 遺伝子情報が集められているの。当然ミト

 コンドリア核の情報もね。でね、遺伝子情

 報、すなわち人間核についての分析はほぼ

 100%解明されているけれど、ミトコン

 ドリア核についてはまだ研究途上なの」


「メイサ言ってる意味わかる?」


千秋はメイサにたずねた。

人間核やらミトコンドリア核やら、聞いたこ

ともない単語を並べられても意味が分からな

いのだ。


「なんとなくわかるわ。人間核とはDNA、

 つまり遺伝子の事、ミトコンドリア核とは

 、本来DNAの中にある単なる細胞だと思

 っていたのが、突然変異でミトコンドリア

 単体で活動できる細胞に突然変異した、そ

 れを総称してミトコンドリア核と言ってる

 の」


「俺にはさっぱり理解できない」


力也は首を振りお手上げだと呻いている。


「細胞はミトコンドリアで作られているんで

 しょ」


千秋の問いに


「そう。全ての細胞はミトコンドリアで作ら

 れていて、このミトコンドリアをDNAが

 制御している構図ね。それがグール化が起

 きたことによりDNAの制御とは離れ、ミ

 トコンドリアそのものが個として活動する

 場合があるとわかったの。つまりミトコン

 ドリア核は、ミトコンドリアそのものが意

 志を持って個別に動く細胞だと、そんな意

 味だと思うの」


流石さすが科学者メイサだ。

素人にでもわかるよう、噛み砕いて説明をし

てくれる。


「つまり俺たちの意思とは関係なく勝手に動

 く細胞があるっていうことなのか」


どうやら力也にも漠然と理解はできたようだ。


「すごい力也理解してくれたの」


「ミトコンドリア核を持っている奴は強くな

 れるんだろ」


力也の場合、理解と言うより、本能で嗅ぎ取

ったと言ったところだろうか。

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