109話 銀のスーツをまとった男達
「お前らは人間よりグールの方が偉いという
のか」
力也が食ってかかって来た。
千秋は力也の息をよけながら
「偉いとか偉くないとかそういう問題じゃな
いの」
「じゃあなんだ」
「人間の進化系がグールじゃないかと」
ふと、思いついたまま言うと、千秋は慌てて
口を押えた。
「そ、そんなことないわよね、人間が一番、
人間が一番の進化系よね」
「当たり前だ、グールは突然変異の化け物だ、
人間を喰らう生き物が人間の進化系なんて
あり得るはずがない」
力也はきっぱり言い切った。
「そうよね、そうだわよね」
千秋も弱弱しく頷いた。
その時だった。
突然千秋達の前に銀のスーツをまとった男達が
全速力で走ってくると、全員が三人の前に整列
した。
「な、何よこれ!」
気味悪げに驚くメイサを、かばうように力也が
前に出ると、逆に千秋は一歩退いた。
自然に三人の陣形が出来上がっていた。
新たな敵か!
そう思った瞬間、目の前に雪の顔が(ぬう)と
現れた。
「ん、、もう」
千秋は雪の顔を払いのけると
「その出方はもうやめてと言ったでしょ」
「あら、もう驚かないの、つまんない」
雪がクスクス笑っている。
「だって千秋ちゃんの驚く顔面白いんだもの」
「しまいに私だって怒りますよ」
膨れ面の千秋に
「で、ブースはどこ?いないじゃないの」
三人は顔を見合わせた。




