10話 攻撃の糸口が見いだせない
千秋の胸板が貫かれたと思った瞬間、横から
力也の大鉈が赤いグールの触手を切断した。
「あ、ありがとう力也」
千秋は礼を言うと赤ん坊を抱いた女の前に
仁王立した。
「やっぱりこの人達が目当てだったのね」
「力也、千秋の助太刀をしろ」
「しかし、お前は」
「いいから俺の命令通りに動け」
鋭く言い放つと赤いグールに挑みかかった。
赤グルーは幽厳村正の太刀をよけようともせ
ずそのまま頭から真っ二つに割れた。
割れた身体は瞬間塵になり、大気中に霧散し
た。
幽厳村正はそのまま、青グールに向かおうと
したが、背後に殺気を感じ、転がりながらそ
の場から移動した。
背後には霧散したと思っていた赤グルーが、
元の身体に復活し襲い掛かってきたのだ。
ゆっくり起き上がった幽厳は横を見た。
千秋と力也は、赤ん坊を抱いた女を守りな
がら白グールと戦っていた。
「千秋そんなにイキるな」
普段は千秋が力也の暴走を止めるのに、今回
は千秋が狂っていた。
赤ん坊連れの女を襲うグールがたまらなく許
せなかったのだろう。
力也に諌められても千秋の攻撃の手は緩まな
かった。
上段、下段、突き、と何度も白グールを貫く
が、そのたび白グールは復活する。
らちがあかない。
それでも千秋は攻撃の手を緩めない。
まるで何かに取りつかれたかのように白グ
ールを突き刺しまくる。
「おい千秋、」
何度目かの諌めで、力也は黙った。
千秋の瞳が輝いているのだ。
こいつは狂ってなんかいない、正気だ。
何か考えがあって、こんな無茶な攻撃をし
ているんだ。
ならばこの女を守るのは俺の役目だ。
力也は女を少し後ろに下げると、幽厳村
正と千秋の戦いの様をゆっくりと眺めた。
それにしても、、
極端な戦い方の違いだ。
幽厳は赤グールと対峙したまま動こうと
しない。
それに反し千秋と白グールは動き回って
いる。
「あいつのスタミナはどうなっているんだ」
思わず唸った時、突然千秋の動きが止まった。
スタミナ切れか、そう思った時、千秋が力也
のもとに戻って来た。
「あいつ、あんたが弱虫だと言ってるわよ」
「なんだと」
「女のあたしに戦わせて、自分は赤子を抱い
た女を守ってるふりしてるって」
「ふざけるな!」
力也が立ち上がった。
瞬間体中から紫の炎が立ち上ると、大鉈を
出し白グールにとびかかって行った。




