101話 ここまで濡れたのは誤算だけど
メイサが囮になりブースを引き付けている間に
力也は千秋に駆け寄った。
凍った千秋はピクリともしない。
しかし様子がおかしい。
氷の固まりの中の方がピンクに光っている。
しかも表面の氷が溶けだしている。
突然ミシリと氷にヒビが入ると、小さく爆ぜ、
中から千秋が出てきた。
「大丈夫か千秋?」
「わかったわ、あいつの弱点が」
「わざと氷を浴びたのか」
驚く力也に、悪びれもせず頷くと
「だって、解析してみないとわからないでし
ょ、あいつの光線」
「馬鹿、凍っちまったらどうするんだ」
「大丈夫、周りにシールド張ったから」
「だから、そのシールドが破られたら」
「破れなかったからいいじゃん」
あっけらかんとした、千秋に力也は憤然とした。
「千秋はもっと、冷静沈着な奴だと思っていた
が」
「何言ってるのよ、これでもちゃんと勝算ありと
思ってあいつの冷凍光線浴びたんだから」
その割には体中がびしょびしょだ。
顔に付いた水滴を払うと
「ここまで濡れたのは誤算だけど」
頭を掻いた。
「驚かせないでくれよ」
首を振る力也に向かって、遠くからメイサが叫
んでいる。
「ちょっと、いい加減にして、いつまでこのゴ
キブリと遊ばせておくつもり」
「いかん、忘れてた」
力也が慌ててメイサの方に向かおうとした。




