愛してる、まであと一歩
見つけた。と言った声は、わたしが願ってもやまない人の声で、その人は、わたしがいる場所の意味をわかっているのでしょうか。ここは失恋したあの日、二人で星を見た屋上なのですが。
「ねぇ近藤くん、」
「何?」
「ここ、すぐわかった?」
「あぁ簡単だ」
「近藤くん、」
「なんだい」
「好きなんですが、期待しても良いんですか?」
「どうやらそういうことらしいぞ」
「らしいじゃわからない」
「言わなきゃダメだろうか」
「是非とも」
「でも、俺の意思は伝わっただろう?」
「…椅子が大好き」
「そう!椅子も好きだ!」
「"も"ですか」
「"も"です」
「あ、教授」
「お、ホントだ」
「く…近藤くんに先を越された」
「教授、お疲れ様です」
わたしたちは屋上の冷たい床に座り込んで沈みゆく夕陽を見ていました。いつもは真っ暗な闇の中で微かな光を探しているのが当たり前だったので少し不思議な感覚です。そのまま無音の空間に浸っていると、がさっと教授が立ち上がりました。
「さて邪魔ものは退散しよう」
「え?教授?」
「近藤くん、覚悟を決めるんだな」
「余計なお世話ですよ」
「素直じゃないな、まったく。
それでは、さらば」
「はい。さようなら教授」
「……………なぁ」
「なに、近藤くん」
「…………あー」
「言うならさっさとどうぞ」
「東…あいし、ールド21」
漫画の名前じゃないか。
愛してる、
まであと一歩
(本当に素直じゃないなぁ)
(あ、教授)
(覗きなんて趣味が悪いですよ)
(近藤くんのような、ヘタレに言われたくないな)
(まったくです)
(…立つ瀬なし、か)
END
このシリーズはここで一応の完結です。他に違う機会で書いたお話を番外として載せます。それにて完結です。
このキャラクターたちはかなりお気に入りだったので、また何か思いつけばお話を書きたいなぁと思っています。その機会があればまたお目にかかりたいと思います。
ここまでお読みくださりありがとうございました!