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星帝の過去

閑話的に星帝視点の話です。

 気付いたら≪星帝≫と呼ばれていた。

 敬われる態度とは別の視線も感じていた。


 3歳の時≪星皇≫と呼ばれている双子の兄弟がキラキラした瞳で告げた。



 「星皇帝様に姫がお生まれになったそうです。ロクーム様が星の印をお与えになったと仰せになられました」



 この知らせに星中は沸きかえった。

 皆の喜びはすさまじかった。


 「星皇帝様が生きておられた」

 「星が姫を選ばれた」

 なによりも

 「星皇陛下はロクーム星に認められた」

 力を示しはじめたシェスに父母の喜びもひとしおだった。



 だが星帝たる私は逆だった。


 力を示すたびに恐れられるようになっていった。


 それはそうだろう。

 何処かに水をとの星皇からの星の言葉の通りに力をふるえば、大雨・洪水。

 雨をやませるのに干ばつ。

 極端すぎたのだ。


 「このように幼く星帝になった者はおらず、ロクーム様も自分の強大な力を使うのは難しいのだとおっしゃております」

 シェスが懸命にかばってくれるのが恥ずかしかった。

 双子なのに、シェスはやれているのに…。


 「星の姫がいてくださればこんなことにはならない」

 「姫はいつまで別の星でお過ごしになられるのだろうか」


 そんな声をよく聞くようになった。

 皆はこっそり話しているのかもしれないが≪星帝≫として力を揮うための身体はあいにくと様々な面で優れていた。


 「星皇帝の姫こそが星帝にふさわしいのに≪星妃≫とは嘆かわしい」

 「唯一の正統な資格を有する子だからこそ星は選ばれたのだ」


 私たちの10歳の誕生舞踏会の日。

 酔った貴族がこぼした言葉に胸を貫かれた気がした。


 その者たちはすでに退位したとはいえ、王族たる父の命によって連れ出された。

 

 私たちの存在を拒否された気がした。

 力がなくともここまで民を治めたのは父だ。

 シェスも星皇としてきちんと…



 私だ。

 私が星帝として頼りにならないから、家族が認められないのだ。



 それからしばらく星は荒れたらしい。


 「ロイ、落ち着いてよ。ロクーム様も哀しんでるよ」

 抱きしめて一緒に哀しんでいたシェスの言葉も耳に入らなかった。


 

 正気に戻してくれたのは父から渡された光輝く金の腕輪だった。


 「これは≪星皇帝≫の残された髪からロクーム様が創られたものだ」


 その腕輪は優しく発光し、温かかった。


 「私はこの兄の温もりに助けられた。おまえにも伝わるだろう。命を賭けて星を民を愛した伯父上の心が」


 実際その腕輪からは不思議な安らぎを感じた。

 物心ついいてから私は初めて泣いた。人前で涙を流した。

 

 「私たちは兄上に一人では敵わない。だが皆で力をあわせれば星皇帝になれる…かもしれない…と思う」

 照れながら父は頭をなでてくれ、母は抱きしめてくれた。

 目の前でシェスは笑っていた。



 それから腕輪は私の腕にずっとはめられている。


 腕輪から伝わる優しい意志に星皇帝の偉大さを感じる。



 そのことを伝えると

 「その方の姫君がロイの妃になるんだよ」

 と、悪戯っぽく言われてからかわれたものだ。



 「お初にお目にかかります。ヒメ・アマサトと申します」


 あれから8年後の今。

 私はその姫君と会った。


 星の声を聴き、星殿まで迎えにいっていた(星殿には星皇しか基本入れないので行けなかった)シェスの後ろにいた一人の少女。


 成人を迎えた15歳になったばかりだときいていたが、凛とした空気を称え、微笑みながらも琥珀の瞳はこちらを圧していた。

 

 伝え聞いた通りの大地の髪は腰まで流れ、初めてみる額の印は輝かしい。



 「はじめまして、星の姫。ロイクラーム・レオイアナ=ロクテラン。星帝だ」


 

 憧れていた方の娘に会ったからか私の胸は何故か変な鼓動を告げていた。



やっと星帝の名前がだせた。


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