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妃芽様の微笑み

 「……」

 「……」

 「……」


 話が終わったのを見計らったかのように、壁際にいたはずのお姉さんがいつの間にかそばにきて、冷めた紅茶を下げる。


 まだ飲めるのに…!


 替えられた温かい紅茶を悠然と当り前のように飲む双子にあきれながらも、私も微笑んで軽く頭をさげる。


 悠然と冷静に…こちらのペースに…


 頭の中で父様の教えを呪文のように繰り返す。



 妃芽は幼い頃より父親にあらゆることを教えられてきた。

 本人は星妃になった時に恥をかかないようにと思って施したのだが、自身が皇帝だったためか、妃という存在をもたなかったためか(普通の結婚。しかも奥さん大好き)、教えが少し妃というより王よりだった。

 今も妃芽が考えているのはいかに場を支配して、こちらに有利な状況を作れるかである。

 残念なことに教えはロクーム星の言葉でやりとりをしていたので、片言は分かった母親も何も細かいことまでは分からなかった。

 当時の妃芽にとっては父親を独占できる楽しい時間でしかなかったのだ。褒められたい、笑顔を見たい一心でへたをしたら学校の勉強よりも打ち込んだものである。


 

 あの頃は純粋だったわね。


 遠い考えを紅茶を飲んで引き戻す。

 カップをソーサーに戻し、まっすぐに前に視線をもどす。


 「…それで私に何をおっしゃりたいのでしょう」

 有無を言わさぬ微笑み付き。


 幼馴染いわく『姫様の微笑み』。

 本人は名前からの呼び名だと思っているのだが、本当の言葉は『妃芽様の微笑み』=『逆らえない微笑み』と言われているほど迫力がある。まっすぐな瞳に射抜かれ、なにより空気が怖いらしい。小さい子に泣かれてからは、親しい幼馴染を脅す時(笑)、または気に入らない相手のみに発動する(……)。



 「父様の貴重な過去をお話くださったこと心から感謝いたしますわ。…ですがこちらの方々は父をボロ雑巾のように使うだけ使ってお捨てになったのでしょう。いまさらその娘に何のようでしょう。この痣があるからですか?はっきり言って幼い頃から迷惑しかかけられてませんの。…星皇様はこの痣をつけた星とお話できるとか、とっていただけるように言っていただけませんか」


 日頃の恨みもあってか少し口調がきつくなってしまう。


 本当に父様が綺麗だと言ってくれなかったら整形してでもとってたわよ。まぁからかった奴らは…フフ♥…いけないいけないますます笑みが…



 「星妃…いえ、星の姫君。我々はあなたの力を必要としているのです。ロクーム星も貴女をお認めになり、その印を」



 すっと立ち上がる。



 「最終的には救ってくださったとはいえ、父様を苦しめ殺そうとした星に認められるなんてこちらからお断りですわ。例え父様が許しても、私には父様を苦しめたという事実だけで結構。私は許しません」


 そう。一番腹たったのはこのことよ。

 父様は手紙で星の願いを説き、民の心配をしていた。

 話すことが終わってからはただこちらを見ているだけの星帝を支えて…云々まであった。

 本当に父様は恨んでなどなく、心配と願いの気持ちでいっぱいなのだろう。


 でもね、父様。私は父様ほど優しくもなければ心も広くないの。

 ましてや父様、自分がどんな異常で理不尽な立場にいたか分かってない!


 この色が反対なだけのそっくりな双子の王様たちも。


 

 思わず出そうになった溜息を気付かれないように飲みこんだのだった。


 




妃芽は笑顔で感情を隠すよう教えられました。

それを幼いころからしていたので敏感な子供には特に怖がられてたという黒歴史あり。

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