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69. 古今和歌集の事 政子遊行の事

 三月三日 快晴 桜が鎌倉の方々で咲いている。鶴岡八幡宮で一切経会いっさいきょうえが行われる。南無妙法蓮華経など本来はお経の題目(書名)を、くりかえし唱えることでゴリヤクが得られるという事で行われる法事である。

実朝はいまだ病気から立ち直らないので、義時が代理で主催する。実朝と政子も牛車で参宮した。

閏四月十一日 実朝将軍は再び悪くなった。


閏四月二十四日 実朝の病気がやっと良くなった。やっと湯を浴びる事が出来るようになった。


五月二十九日 実朝室のおつきの侍、藤原清綱が昨日、京都から着いて、今日、御所にやってきた。清綱は大変学識のある者であるということだ。清綱は実朝の前で平伏一礼した後で面をあげて言う。

「お目通り頂きましてありがとうございます」

「清綱殿は京都で活躍との事伺っておりますよ」

「私などに、そのような御言葉、まことにかたじけないことでございます。…早速ではありますが、当家に累代伝わる藤原基俊(もととし)の書写による古今和歌集を持参致しました。なにとぞお受取になて下さい」

「ああ、これは美しい筆蹟ですね。基俊といえば書で世間に聞こえた方、その手になる古今和歌集は宝物ではありませんか。頂けるのですか、本当に嬉しい」実朝は満面笑顔である。実朝は最近の京都の有様、伝え聞く京都の猛火の事などを清綱に尋ねるのだった。


十月十日 尼御台所(政子)が今朝、鎌倉を出発した。武蔵守村一行がつき従う。すべて騎馬だ。

「若殿がいつまでも、治癒しないので、霊験があるという熊野詣でを思いたったのですよ。運の良い事にだいぶ治癒なされたようですが、まだ公務にはお出になれないようなのですよ」と馬上から、これも馬上の守村ににこやかに語りかける。

実朝の疱瘡がどうやら峠を越したようである。政子にはそれが嬉しい。とにかくこれで鎌倉も安泰だ。義時も手堅く鎌倉の手綱を握っている。実朝のさらなる治癒を理由に、遊行に出ようと思いたった。。

「将軍がいつまでも、健康が優れないようなので、霊験があるという熊野詣を思い立ったのですよ」



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