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6 北条と比企の争乱

 能員よしかずは従者と馬を正門の馬場に残して、次のやや小さい主門から案内の者一人に邸内に導かれた。山中の昼下がりであるから、ひぐらしがカナカナと鳴いている。涼しい風も吹いてくる。それを感じながら渡り廊下を能員は歩いている。その時、後ろからひそかに忍び寄った筋骨たくましい新田忠常が能員を突然羽交い締めにする。能員は「何事か!」と大声を上げて振り返ろうとするのだが、能員はひどく強い力でそれを押さえられる。あがいている間に前から天野遠景が短刀を光らせ素早い動作で能員の胸元めがけて飛び込んで刀身を能員の体内に深く突きいれた。能員は心臓をさされて、ゆるゆると廊下に倒れ伏した。しばし二人は能員を見つめていたが、その後、お互いの緊張した見開いた眼をあわせ、うなずいて仕事をし遂げた事を確認するのだった。北条時政は物陰からその様子を見ている。能員は静かに床に伏している。足音もあらがう人もなくなった邸内にはひぐらしが鳴いているだけである。

 馬場の待ち部屋にいる、能員の従者にも能員の大声とともに争う音が伝わっていた。能員に良からぬ変事が起きたことはあからさまである。従者は手近の屋敷の者になにがあったのだと訊ねるが、はてそのような物音は聞きませんがと言うばかりである。それに読経の音も尼御台所が来ている気配もない。どうやら謀られたようである。従者達は時政邸を脱けだし、近距離の比企邸まで走った。

 比企の一族は能員に変事が起きたことを知り、直ちに能員邸に隣接している将軍頼家の長男、一幡の広い邸(将軍の長男の在所であるから小御所こごしょとよばれている)に集結して甲冑をつけ戦いの準備を始めた。比企一族が合戦の準備をし始めたことは、すぐに北条氏に伝わった。北条時政は将軍名を使って比企謀反の罪で追討命令を発した。

 次の者達が比企追討に参戦する。北条義時ほうじょうよしとき北条泰時ほうじょうやすとき平賀朝政ひらがともまさ小山朝政おやまともまさと息子の五郎、七郎、畠山重忠、(しげただ)榛谷重朝はんがやしげとも、(前記二名は秩父一族)三浦義村みうらよしむら、和田義盛(よしもり)同常盛つねもり同景長かげなが、(前記三名は三浦一族)

               

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