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5 北条と比企の争乱 

 馬上の広元は馬を引く宗長にこう言った。

 「世の中の有様は本当に恐ろしい。重大な事について、今朝、時政殿と細々と協議したのに、又すぐに呼ばれるとは何事だろうか?ひょっとしたら私が罠にはまっているのだろうか。殺されるぐらいならお前が私の命を素早く絶ってくれ」

 時政と広元の対面中、宗長は広元の背後にいて座を離れなかった。時政が広元を呼び出したのは屋内で謀殺するという計画の変更が因であった。時政と広元は綿密な計画を再度練り上げた後、別れた。

 広元は午のうまのこく(正午)無事自宅に帰ることができた。


 時政は「仏師ぶっしに造らせていた薬師如来像が出来上がりましたのでその供養のたに、高僧栄西が読経し尼御台所も列席なさる。ついてはあなた様にも来邸して頂きたい。そのおり、積もる話なども致しましょう」と書いて二階堂行光に持たせて比企邸のある比企が谷戸(ひきがやつ)(現在妙本寺がある谷戸)の能員よしかずに出した。(二階堂行光は鎌倉の文書官として京都から下った二階堂行政にかいどうゆきまさの息子で父の仕事を継いだ鎌倉幕府の優秀な筆頭執事で、鎌倉幕府の歴史書である「吾妻鏡」の筆者の一人と言われている)

二階堂行光が帰った後、比企能員の息子達が集まって、能員にいさめて言う。

 「父上、はかりごとかもしれませんな。代わりの者を出すなどした方が良いのではありませんか?たとえ行かれるにしても甲冑を着けた郎党に弓を持たすなどなされた方がよろしいのではありませんか?、北条に気を許してはなりませんぞ」 能員はしばらく無言で一点を見つめるようにしていたが「武具を着けた格好をして行ってみるがいい、かえって人の疑いを受けるのではないか。比企の能員は謀反の考えがあるぞと、鎌倉中の人々が騒ぐに違いあるまい。この招待は仏事のこと、先日の一幡公に対する不当な相続のことで譲歩するなど、合わせての用事なのだろう。急いで行って参るぞ」

  だが、そのような能員の楽観的な考えはうち崩された。北条時政は名越邸に屈強な強兵を武装させて待ちかまえていたのだ。中野四郎、市河五郎という弓の名手を呼び、弓矢を持たせ、門の陰に立たせた。天野遠景、新田忠常はしっかりと腹巻きを着けて西南の脇戸の陰に隠れていた。

 まもなく能員は訪ねてきた。白い水干に、麻の様な風合いの葛袴くずはかまを身につけ黒馬に乗っている。郎党を二人、雑色(身分の低い侍)を五人ともなっている。                                    

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