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38 実朝と実朝室の出会い

 やがて山側の北御門きたみかどに近い、奥まった寝殿に広元の先導で実朝の室となる姫と父の坊門信清が入ってきた。庭に面した一室には政子と実朝と時政が座っている。広元が二人を先導して、部屋に安内した。

「坊門様とその姫様がお越しになられました。坊門様、姫様、そちらにお座りに成ってくださいませ」それだけ云うと退去した。

 実朝は室に成る人を目で追った。細面の顔で目鼻が精妙に整っている。可愛らしく人形のようだ。ゆっくり座して、じつにゆっくり頭を下げて、それからたゆたうように、頭をあげて、見るとでもない自分の内面を見つめるような優しい目で時政の言葉をまっている。

「長い旅路、ご苦労様でございました。初めましてよろしくお願い致します。私は京都に鎌倉の代官としていたこともある北条時政でございますが、姫はお若いからご存じないでしょうね。こちらに座しておられるのが今は亡き源頼朝将軍の妻室で政子様で、実朝様のお母様でいらっしゃいます。出家しましたもので、皆は尼御台所と呼んでおります。そして、この私めは政子の父で北条時政と申します。かたじけなくも、今、天下の采配に参与させて頂いております。政子様の上座に座しておられる若様、この方があなた様の夫となられる源実朝将軍でいらしゃいます。

 姫はわずかにうなずいた。

 姫の父、信清がしばらくの間のあと言った。

「坊門信清でございます。このたびは縁ありまして、鎌倉殿の妻となる娘を送ってやって参りました。未熟なものでございますが、よろしくお引き立て下さりますようお願いもうしあげます。姫、ご挨拶を申し上げなさい」

 姫はまだ十二才ながら宮廷の生活に慣れているのであろうか、宮廷風の優しい口調で言った。

「みなさま、右も左も判りませぬ、ふつつかな私をよろしくお願い致します」そしてゆるりと頭を下げた。 

 なんと典雅で可愛い人なのであろうか。まるで京都の春の風が吹いて来るような麗しさではないか。実朝はこの選択が誤りではなかったと思った。


 

 

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