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35 実朝嫁取り、朝範の危篤

 十月二十九日 実朝室のお迎えの一行の代表格である北条政範ほうじょうまさのりが旅の途上で病にかかった。北条政憲は、今十五才で、義時の異母兄弟だ。義時の母はすでに亡くなって後妻の牧の方が北条時政の後妻となって隠然たる権力を行使している。その牧の方の子が政範だ。

 北条氏の筆頭、時政の心の中に、次代政権は政範という気持ちがうごめいているのを義時は感じないではいられなかった。今度の使者の主役に政範が抜擢されているのが義時には面白くなかった。

 政範が旅行中、病を得たというが、あるいは義時が何らかの謀略の手を政範に伸ばした可能性がある。たとえば義時の突撃隊である金窪行親あたりが動いて宿の食事に毒を盛るという事は考えられる。


 十一月四日 京都守護(京都の治安と朝廷を管理する鎌倉の出先機関だ)平賀朝雅ひらがともまさ六角東洞院ろっかくとうどういん邸で上洛をねぎらう宴が開かれた。

 この席上で朝雅と畠山重保はたけやましげやすが喧嘩になった。重保の母は北条時政の娘だ。時政に対しては外孫といった関係である。朝雅は時政の後妻、牧の方の娘を嫁にもらっていている。母は頼朝の乳母であった比企尼の三女だ。父は頼朝と旗揚げを倶にした源氏の一派だ。(なんとも複雑な関係だ!筆者)、ともに北条氏の近親だ。近親ながら、朝雅は時政側で、重保は義時側という微妙な立場にある。政範があぶないという報はすでに朝雅の耳に届いている。政範が亡くなったりすれば、朝雅の北条氏内の立場は不利になる。それで朝雅は不機嫌である。 

 北条氏の次代の頭領が目されている若い、元気な北条政範が突然危篤になってしまったのは変だという気持ちが酒の力で出てしまった。そして三十代半ばの朝雅は十才も若い重保をいくらか軽く見ていた。

「重保どの、朝範どのの突然の病は少々おかしくはありませんか?聴けば鎌倉出立のとき朝範どのは元気だったそうではありませんか、それが突然体調を崩されて危篤状態とはいかにも不自然」

 その言葉を聞いて、根が剛直な重保は杯を膳に置いて「不自然?何が不自然でありましょう。私ども若いながらも有能な武将面々が体調を崩されるのを見ております。何ですか、誰かが毒を盛ったととでも思っておられるのですか。毒を盛るような振る舞いを私が見逃すとでもいうのですか」

「貴殿が毒を盛ったと云っておらぬわ」

「云ったも同然ではないか!その言葉は重いぞ」

 双方、刀に手を掛けようとする様子に、周囲の者があわてて押しとどめた。

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