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23 冬の日だまりのような日々

 経を唱える安楽坊あんらくぼうは専修念仏の浄土宗の開祖である法然ほうねんの弟子で、美声美男で知られていた。二年後には京都において、念仏会に来た後鳥羽上皇の女房二人が感激のあまり出家してしまう出来事に巻き込まれ、上皇の逆鱗に触れる。このことは浄土宗の流行について反感を高めていた旧来の宗派の僧達の反撃の好機となり、ついに京都六条河原で斬罪になってしまうのだ。・・・高僧六人による読経は美声、美僧、豪華な衣装を伴って、実に華麗なものであった。


 唱えられる法華経は西暦40年から150年の間に徐々に増筆されたお釈迦様の日々と言動を記録したと言われるものである。お経は一般に訳のわからない呪文と思われているが、ちょっとお経の世界を覗いてみよう。

 

 如是我聞 一時佛住 王居城(これのごとく私は聞いた。ひととき、お釈迦様は王の居城に住んだと)耆闍堀ぐりどらくーた山中 興大此丘衆 万二千人俱(城はグリドラクータ山中にあり数多くの僧が一緒にいた)皆是阿羅漢 諸漏己盡 無復煩悩(皆是は修業を成し遂げたもので、ふたたび煩悩に捕らわれることはない)達得己利 盡諸有結 心得自在(己のあるべきを体得し 目的を達成し 心の制御を得ている)

 実朝は幼くして、その内容を理解している。まだ幼い実朝だが、唱えられる一節一節が、実朝には理解できることなのだ。仏様の心が解る実朝将軍が殺し合う武将の世界のただ中に住むのは辛いことだったと推測される。

 

一月十日 快晴 寒風が強い 昼ごろ風は和らぐ

 

 うまの刻(昼)、御弓始めが行われた。実朝将軍は座所の御簾みすを上げて見物する。射手は六人で、二名ずつ三回、各人二十五矢を射る。


 一番 和田胤長 榛田重朝

 二番 諏訪盛隆 海野行氏

 三番 望月重隆 吾妻助光


 先日、古強者の弓さばきに驚いた実朝だが、今日は弓使いとして世間に知られた若い屈強な武士達による弓始めだから、もっと迫力がある。矢は恐るべき早さで的をめがけて飛んで行く。今日使われている矢は音の立つ蟇目矢ひきめやである。全150本、ひゅう、ひゅうというけたたましい音が山茶花さざんかが赤や桃色で咲いている静寂な御所内に響き渡っている。


 








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