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1 頼家 病にかかる

 建仁三年(1203年) 七月二十日(旧暦)晴れ  蝉がうるさい、うだるような、新暦では八月末のこの日、鎌倉幕府第二代将軍源頼家(みなもとのよりいえ)は、夕方まで蹴鞠けまりを楽しんでいたのにいぬの刻(午後八時頃)突然、頭痛、腰痛とともに高熱を発して寝込んだ。見るところ、恐ろしい死の病、疱瘡(ほうそう)(天然痘)と思われる。 将軍の母で、故源頼朝(みなもとよりとも)の妻、尼御台所あまみだいどころ北条政子ほうじょうまさこ)と政子の父の北条時政ほうじょうときまさは、鎌倉中の社寺に向けて、将軍の治癒ちゆの為の祈祷きとうをするように命じた。それで鎌倉中の社寺は狂気のように祈祷に取り組んだ。しかしながら、病状はいっこうに快方に向かわなかった。

 七月二十四日 将軍の恐ろしい高熱は去ったが顔面を中心に、髪の生え際まで、びっしりと白っぽい豆粒のような、デキモノが発生した。 その日から、デキモノは全身に広がりだし、やがて発疹は化膿してぶよぶよとなり、再び高熱が頼家の身体を襲った。 ぜいぜいと呼吸もひどく荒くなり、下痢も発する。食事はまったく受けつけず、死んだように伏せているのみとなった。

 八月十日 頼家将軍の病気見舞いをして、うまの刻(昼)に時政と政子は、大蔵御所おおくらごしょ(鶴岡八幡宮至近。三万坪ほどの敷地で、将軍が寝起きし、政務を執る場所である)から要塞のような名越なごえ山の中腹の名越北条時政邸にもどって来た。 名越邸の部屋に入り、時政はあたりを見回してから、声を落として上座に座る政子に話し始めた。「殿は助かるまい」 「そうでしょうか・・・駄目でしょうか」 「うむ、重い疱瘡だと医の者が申しておった。・・・嫌な話だが、万一亡くなられる事になると大変な事態だ。・・・次の将軍は当然ながら頼家の長男の一幡いちまんと云うことになる。・・・一幡の母、若狭局わかさのつぼね比企能員ひきよしかずの娘だ。幼い六才の一幡が将軍になると、比企能員ひきよしかずは将軍の外祖父となってしまう。そのような事ともなれば鎌倉は比企一族の思うがままになってしまうから、この俺も貴女も立場を失ってしまうに違いない。我らが北条家は日頃、御家人の恨み嫉妬もかっているから、北条の明日は無いと思える」 「・・・ひょっとすると父上は比企の族滅(一族の全滅)を考えてはいませんか。そうなると私の孫である可愛い一幡はどうなるのですか?」 「なに比企を押さえるだけだ。一幡を殺すようなことはさせん」 「そうですか?約束ですよ。若狭の局と一幡の身は守って下さいね!一幡は父上にとってもひ孫ではありませぬか」

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