国王陛下との謁見
皆様、御機嫌よう。シュトリン・カダルマールですわ。
私はチビエマ使節団と共に馬車で王宮に向かってます。
チビエマ王国では、平民街と貴族街に王都が別れてるらしいですわ。
平民のチビエマ達は、市場で元気良く売り買いしていますわね。
あぁ、眼福。
殺伐としていたデコタラ王国と違って居心地良いですわ。
門を抜けて貴族街に入ると、そこは貴族の街でしたわ。
一流商会が軒を連ね、家紋の施された馬車が停まって居ましてよ。
あっ、貴族令息が自転車で爆走してますわ。
自転車……まさかこの目で、見る時が来るとは……。
貴族夫人が優雅にレストランで一人食べていたり……
遠巻きに推し活するチビエマ使用人達。
チビエマは本当に自由で最高だわ。
貴族街を抜けて遂に王宮へとやって来た。
私はチビエマ使節団にエスコートされ、チビエマ王宮へと入る。
白い軍服を着た騎士団達が警護していますわ。
「陛下にお目通り願うきゅ。こちらシュトリン・カダルマール令嬢うきゃ」
チビエマ使節団団長が紹介してくれました。
「ふむ、報告の通りですね。私は副騎士団長のマトバ・ゼターニャです。陛下が御待ちしておりますので、どうぞ玉座の間にお進み下さい」
紳士なマトバさんに言われ、私は微笑みましたわ。
あまりにも美しいから、女性と間違ったのは内緒でしてよ。
使節団団長と共に、私が玉座の間に入ると一人のチビエマが玉座に座っていました。
指を弾いてチビエマが変身したのは、金色の長い髪を一つに結わえ、豪華絢爛な正装を着た麗しき青年。
私は慌てカーテシーをしましたわ。
彼こそ、エマネット・フォン・エリシェンド。
チビエマ王国の国王であり、チビエマ達が敬愛する賢君。
「シュトリン令嬢だね?話は既に使節団から聞いてるよ。チビエマ王国で学びたいと言ってるけど……君はチビエマ王国で学び何をしたいのかな?」
真っ直ぐ見詰められ、私はエマネット国王陛下に聞かれました。
私が答えることはただ一つ。
「幼き頃から私は、チビエマ王国の英雄達の絵本を読んで育ちました。その中でもアスラン様は私にとって憧れの存在なのです。学びを通して研鑽を積み、堂々とアスラン様に師事する事を目指し精進したいですわ」
私は興奮しながらエマネット国王陛下に答えましたわ。
「アスランに憧れるなんて君は変わった令嬢だね?面白い……ならば頑張って学びたまえ。勿論、チビエマ王立学園に編入する手続きは済ませてあるからそこで学ぶといい」
エマネット国王陛下は、愉しそうに笑って答えましたわ。
「ありがとうございます」
私は頭を下げて礼を言います。
「優秀な人材はいつでも歓迎するからね。滞在先はエリシェンド伯爵家にしよう。同じ年頃のリーゼ令嬢もいるから話も弾むだろうしね」
「重ね重ねありがとうございます」
エマネット国王陛下の気遣いが嬉しくて、私は頭を再び下げましたわ。
「ドレスを用意したから着替えを済ませなさい。カナーラ、頼むよ」
「承知致しましたわ、シュトリン令嬢、こちらへ」
私はカナーラと呼ばれた侍女に連れられ、その場を後にしたのですわ。
「マゼラス、君の審美眼に叶ったシュトリン令嬢は面白いね」
「はい、聡明であり向上心に満ちておりますので、是非とも養女に欲しいと考えておりますうきゅ」
「実家のカダルマール伯爵家では、不当な扱いを受けていたようだしね。まぁ、実質カダルマール伯爵家を支えていたのは彼女だ。今頃、相応の代価を払わされているよね」
「例のデコタラ王国ですが、如何にしますか?」
「騎士団と空から魔道飛行挺部隊を向かわせるよ。制圧して属国にするなら早い方が良い。元々、交渉決裂したら攻める手筈だったからね」
「デコタラ王国を足掛かりに、人間大陸で睨みを効かせれば……チビエマを侮る人間も減りましょう」
だからエマネット国王陛下と、マゼラス使節団団長の会話を私は知らなかった。
チビエマが可愛いだけの存在じゃないと気付くのも時間の問題だったと思う。




