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IQ100の天才  作者: 七星北斗


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9.連和

子犬は、弱々しく鳴いた。

声というより、息が漏れたような音。

それでも確かに、生きている音だった。

アロンの頬に、温かいものが触れる。

ざらりとした感触。

子犬の舌。

「……生きてるな」

それだけ言って、アロンは笑った。

力は、もう残っていない。

岩影の中。

火は、まだ小さく揺れている。

雨音は、遠くなったような、近いような。

アロンは、子犬を抱いたまま、身体を丸める。

恐怖も、不安も、思考も。

全部、眠気に溶けていく。

彼は知らない。

自分が今、「守る側」になっていることを。

眠りに落ちる直前。

アロンの胸の中で、小さな鼓動が、確かに続いていた。

同じ夜。

ノーマたちは、ようやく道を見つけていた。

遠回り。

効率は悪い。

だが、進める道だった。

誰も文句を言わない。

もう、最短距離を信じるだけの 体力も、自信もなかった。

しばらく進むと、影が見えた。

屋根、壁。

古びた、空き家。

誰かが、言葉を失う。

それは、「安全」という概念そのものだった。

中に入る。

床は軋む。埃が舞う。

だが、風はない。雨もない。

座り込む者。壁に背を預ける者。

誰も、すぐには話さない。

ノーマが、棚の奥から、石を見つけた。

火打ち石。

火が、生まれる。

小さく、確実な火。

濡れた服を、少しずつ乾かす。

身体が、ようやく温度を取り戻す。

「……助かったな」

誰かが言う。

ノーマは、頷くだけだった。

彼は理解している。

これは、判断が正しかった証明ではない。

ただ、運が味方しただけだ。

同じ夜。

列車の中。

ヴィンとマリアンは、向かい合って座っていた。

外は雨。

だが、ここは静かだ。

ヴィンが、 視線を落とす。

「……すまなかった」

短い言葉。

マリアンは、すぐには答えない。

少し考えてから、言う。

「いいわ」

「あなたが決めるべきだった」

ヴィンは続ける。

「俺は、考えすぎた」

マリアンは、首を振る。

「違う」

「あなたは、止まる選択肢を考えた」

「それは、必要だった」

少しの沈黙。

それから、マリアンは言った。

「でも、今は――」

「私が決める」

ヴィンは、はっきりと頷いた。

「リーダーは、君だ」

列車の奥には、食料が積まれていた。

保存食。水。簡易調理器具。

彼らは、久しぶりに 満腹を知る。

身体が、正直に反応する。

横になる。

眠る。

夢を見る者もいる。

ここでは、生存が保証されている。

同じ夜。

岩影の中。

火は、まだ消えていない。

アロンは眠っている。

子犬は、彼の胸に顔を埋めている。

誰にも管理されず。誰にも命じられず。

ただ、二つの命が、そこにある。

夜は、静かに進む。

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