P14 それは愛情でなく同情
1月5日
エルドに、救護室へ通っている理由を聞いてみた。
「大したことじゃない」だの「気にしないで」だの、濁されて終わった。
ルーリエの救護室の診療録を確認した。
エルドの名前が一度も載ってない。
スタッフに聞いたところ、休憩時間に個人的に診ているとのこと。
1月6日
ルーリエに、婚約者が長く世話になっているけど負担になっていないか、と尋ねてみた。
「いえ、全然」
「エルドさん、優しくて……お話を聞いてもらえて、私も癒されています」
「黒い聖母討伐の後なんて、落ち込んでいたら、励ましてくれて。いい人だなって思いました」
ただのしゃべり友達といったトーン。
(どうでもいいけど、黒い聖母討伐の件、なんとかしたの私だよね……?
往々に、尻ぬぐいをした人間より、慰めただけの奴が慕われるの、納得いかない)
1月7、9、10日
昼の休憩、3日ほど隣室からルーリエの救護室を偵察。
・「いつも診てもらってるから」と、エルドが昼食を差し入れ。
・会話の内容は、ルーリエの仕事の悩み相談。
・お互いの昔話。エルド、いじめられっ子だったことは隠してる模様。
・ルーリエ、エルドに往診の護衛を依頼。
・3日間、診察らしい行為は皆無。
1月13日
ラナから決定的情報を入手。
エルドが「そんなに辛いなら……俺と結婚する?」とルーリエを口説いていたとのこと。
飲んでたスープ吹きそうになった。
結論。
エルド、浮気だった。
なお、ルーリエは「でも……ミリアさんとは別れてくれるんですか?」
双方有罪。
辛いなら俺と結婚する? って……
おまえ、辛いっていう奴となら誰とでも結婚するのかよ!
※
思い出した。エルドが私にプロポーズしてくれた晩。
あの日私は、仕事が辛いと延々愚痴り倒してた。
本当、辛いやつならだれでもよかったんだ。
好きだから結婚しようと言ったんじゃない。
ただ可哀想だから、だ。
でも、私は黒い聖母を倒せるほど強かった。
だから、弱いルーリエに乗り換えたのだ。
自分より弱い女となら、ヒーローでいられるもんね。
笑えるくらい浅いな。あいつ。
※
呆れた。馬鹿だ。アホだ。見る目がなかった。
あんな男、忘れるのが一番だ。
……のに、眠れない。
裏切られた怒りと憎しみが、心に渦巻いているのがわかる。
ドス黒く、凶暴な感情が止められない。
人を憎めば、神力は濁る。
でも、憎まずにはいられない。
私はどうしたらいい?




