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いやいやゴーストたちだって魂はあるんですよ!! ~先生は今日も見えない何かに頼られている~  作者: 武 頼庵(藤谷 K介)


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第3話 簡単じゃないよ






 さてやるべきことをまずはやってしまおう。

 気合を入れなおした俺はひとまず近くで何も言わず浮いたままの人物に声を掛けた。


「さてマイルズさん行きましょうか」

『ん?』

「行きますよ。奥さんの所へ」

『ぉう? まぁ、まぁ先生がそう言うなら行かないわけには……』

 ごにょごにょと何か言い訳を続けているけど、俺はそれを無視してさっさと歩き出した。




「いらっしゃい先生!! どうしたんだい? こんな時間に」

「やぁセリーヌさん」

 自分の家から少し歩いたところにある一軒の食堂。ソノ前で掃き掃除をしていた一人の女性が、俺が近づいて来た事に気が付いて、顔を上げ人懐こそうな笑顔を見せながら問いかける。


 その問いかけに手を上げて答えると、視線だけを食堂の中へと向けた。


「いや、その……どうですか? お店の方は……」

「あぁ、心配してきてくれたのかい? なぁに心配いらないよ!! あの人が居なくなってもしっかりと守ってみせるさ。何といっても私ら家族の……あの人と私の夢のお城なんだから……」

 掃除する手を止めてお店の外観へと目を向けると、どこか遠くを見るような目をするセリーヌさん。



「それで?」

「へ?」

 ちょっとの沈黙を破り、俺の方へ視線を戻すと、何かあったのかい? という様な表情を見せる。


「先生が来るなんて何かあったんだろう? 相談事なのかい? 今のわたしには出来る事と言ったら食事を出すことぐらいしかできないよ? それともとうとう結婚する気にでもなって相手を紹介してほしいって相談かね?」

 日の光で茶色の髪がキラキラと光る中、がはははと豪気に笑い、そのたくましい腕をグッと俺に見せてくる。


――すこし、空元気(からげんき)みたいだな……。

 いつものように変わらない風に見えるが、やはりどこか元気がない。それはもちろん原因は1つしか思い当たらないけど。


「……ところで、マックは元気になりましたか?」

「あぁ……。ここ最近は元気になったね。ようやく吹っ切れたみたいだ。今じゃ私と一緒にこのお店を繁盛させてやるって息巻いているよ」

「そうですか……」

 マックとはマイルズさんとセリーヌさんの一人息子で、俺の学校へと通ってくれている生徒の一人。


 いつもは元気いっぱいで誰にでも愛想のよいリーダー的な性格をしている子なのだ。

 ただ最近は――マイルズさんが亡くなってからは――どうにもやる気が出なくなってしまったようで、とうとうひと月前から引きこもりがちになってしまっていた。

 

 お店の方へは顔を出して、セリーヌさんを手伝っているようだが、そこから先には出ようとせず、俺の学校へも来ることがなくなってしまっている。


 様子を見に何度も訪れたのだけど、その度に元気そうな笑顔を見せてはくれていたけど、本心ではやっぱりマイルズさんが亡くなった事が相当堪えたのだろう。

 

 俺はセリーヌさんと会話しながらも、俺の横にいるものへチラッと視線を向けた。セリーヌさんを見つめて何とも言えない表情をしたマイルズさんの姿がそこにはある。

 

「セリーヌさん……ちょっとお時間良いですか?」

 思い切って声を掛ける事にした。これから先の事を考えるにあたり、二人にはどうしても言っておかなければいけないと思ったから。


「今からかい?」

「出来ればその方がいいですね」

 こくりと頷きながら返事を返す。


「……分かったわよ。じゃぁ入って」

「お邪魔します。あ、出来ればマックも一緒にお願いできますか?」

「マックも? ……適当に座って待ってな」

「はい」

 俺の表情から何かを感じたのか、セリーヌさんは深く問いかける事をせず、マックを呼ぶために店の奥の方へと歩いて行った。




『先生……』

「マイルズさん。これからのお話しは、あなたの()にも深く関係します。ですから、本当の気持ちを……俺に話してください」

『分かった……すまない……』

 マイルズさんは椅子に座った俺に深々と腰を折り、頭を下げた。




すこしの間マイルズさんと話をしていると、マックを伴ってセリーヌさんが現れた。マックは俺の顔を見ると渋い顔を作ったけど、たぶん俺が学校の授業を受けろとでもいいに来たと思ったのだろう。


――そっちも解決できるといいんだけど……。まずは話してみてだな。

 隣で真剣な表情をするマイルズさんを見ながら考える。




「先生待たせたね」

「こんにちはケント先生」

「はいこんにちはマック」

 俺が座る正面に二人で座ると、マックが挨拶をしてくれる。


「で、さっそくで悪いけど話を聞こうじゃないか」

「分かりました。これから話す事は、お二人にとってとても信じられないことかもしれませんが、俺の話す事を最後まで聞いていただけますか?」

「……分かったよ」

 二人共こくりと頷く。


「では、まずは俺の事から話をしますね――」


――さて、どこまで信じてもらえるかな……。

 今の状態をそのまま二人に話し始めた。




「……そうかい……」

「…………」

 一通り話し終えると、セリーヌさんは一言だけこぼし、マックは俺の事をじっと見つめたまま何も言わない。


「信じて頂けますか?」

「そうだねぇ……。簡単じゃないよ。確かにゴーストって呼ばれるモノ達はいる事は知っているさ。こういう商売をしているんだから色々な話を聞くしね。それに冒険者達もご飯を食べに来てくれる。そんな時に聞いた話にはゴーストはかなり厄介なモンスターだと聞いたことが有るよ」

「……そうですね」

 セリーヌさんは真剣な表情で俺の目を真っすぐに見詰め語る。



「先生の事は信用してるけどね、だけどゴーストと話しが出来るなんて話を聞いたこと無いよ!! 信じろって方が難しいとは思わないかい?」

「ですよね……」

 俺は大きなため息をついた。


「それに、あの人はしっかりと教会に頼んで鎮魂式をしたし、そのままお祈りの元で埋葬もした。この世でシスターや牧師様以外にそんなことが出来る人が居るなんてとてもじゃないが考えられないよ」


『分かる!! セリーヌ!! 俺もそう思ってたからな!!』

 マイルズさんが同調して大きな声で叫ぶ。勿論俺以外にはその声は聞こえていないけど。

 だから俺はマイルズさんにある事を尋ねた。



「セリーヌさん」

「なんだい?」

「俺の言う事は信じられないでしょうけど、マイルズさんのいう事ならどうです?」


 俺の言葉を聞いて、セリーヌさんは大きく目を見開いた。



お読みいただいた皆様に感謝を!!

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