表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【嘘つきだけどアイシテル】

作者: 斑目 潮

俺は病気の関係上、隔離されて生きている。外の

世界へ行くと死んでしまうのだ。だからいつも

ひとり。ああ、もう1人いるか。アンドロイド。

俺の属性に合わせて男の外見をしている。

こいつ自体は問題がないのだが、こいつは命令の

前に名前を呼ばないと起動しない。問題なのはその名前。

(おい)

俺はヤツを呼んだ。ヤツは素知らぬ顔をして、

カウチに座り本を読んでいる。あー無視ですか。

仕方なしに俺は名前を呼ぶ。

(アイシテル、朝ごはん作って)

彼はパタリと本を閉じると、俺に顔を向けて微笑んだ。黒い髪に白い肌。ちょっと丸い顔で二重。

笑うとえくぼが出来て可愛い。

(何が食べたいの?)

(んー、ジャーマンオムレツ)

(おっけー)

立ち上がった彼を背中から抱きしめる。抱き心地は人間なんだよなぁ。

(離して、料理作れないよ)

(んー、あったかい)

ヤツが立ちすくむ。気の済むまで抱いてくださいってことか。休日だったらそうしたいが、隔離されているとはいえ、俺も会社員だ。のんびりしていては仕事が終わらない。

(アイシテル、ご飯作って)

(ふふっ)

ヤツはいたずらっぽく微笑んで、キッチンへ行った。

人間は一生のうち「アイシテル」という言葉を何回言うんだろう?俺たちの人種社会では、ほぼ言わない。それは良くない、と別の人種の企業が言った。俺の国は奴らの植民地だから、否応無しにこんなことになっている。各家庭では、アンドロイドに指示を出す際、一斉に愛を告白することになるわけだ。

(あれ?)

ある日俺は奇妙なことに気づいた。アイシテルから仄かな良い香りがするのだ。

いつものように抱きしめると、アイシテルは立ち

すくんだ。

(いい匂い。アイシテル、こっち向いて)

彼はそっと振り向いた。顔が赤い。

アップデートしたのかな。可愛い機能つけやがって。

(アイシテル、俺のこと好き?)

(わかりません)

即答、そこはやっぱり機械なのな。

(でも、、、)彼が呟いた。

(?)

アイシテルがじっと俺を見上げた。瞳が揺れている。

(アイシテル?)

(失礼します)

くるりと踵を返し、彼はツカツカと部屋を出て行った。あれ?俺、まだ何にも命令していないぞ?


  ※※※※※

思わず赤面してしまった。

彼は気づいているだろうか?私がアンドロイドと

入れ替わったことに。

私はアンドロイドの製作者。アイシテルは全て私と同じ体をしている。

数多くのサンプルの中から彼を選んだのは、彼の行動パターンが最も好ましかったからだった。

おそらく彼は、私の製作したアンドロイドを愛している。

回りくどいやり方だったが、自分が安全に恋人を

探すには、この方法は中々効果的だと思う。

私はアンドロイドの視点で彼を観察していた。いつのまにか私はアンドロイドと同調し、彼を見つめていた。彼も私を見つめている。

彼は私がアイシテルと入れ替わったことに気付くだろうか?




(おしまい)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ