6話「戦慄の部署対抗クイズ大会」
年に一度の部署対抗クイズ大会は、社員たちの知力を競い合う場だ。しかし、田中の参加する部署は、彼が足を引っ張ることで毎年最下位争いをしていた。今年も、最初の数問で全く答えられず、田中は頭を抱えていた。
「おい田中! お前、本当にやる気あるのか!?」
チームメイトからの苛立ちの声が飛ぶ。田中の肩が震え出す。
「パードゥン?」
彼の体が、巨大な筋肉の塊へと変貌した。
「やる気、あります! 答えは、この通りです!」
パードゥン田中は、一瞬にして会場に備え付けられた20台のノートパソコン全てを起動させると、光速でキーボードを叩き始めた。彼の指は残像を残すほどの速さで動き、世界中のあらゆる情報を瞬時に検索していく。クイズの問題が読み上げられるやいなや、彼は「正解は〇〇です!」と、司会者が問題を読み終える前に答えを叫んだ。
「早すぎる! ちょっと待ってください田中さん! まだ問題文が!」
司会者が慌てて制止するが、パードゥン田中は止まらない。彼はすでに次の問題の答えを探し出しており、彼のチームは驚くべきスピードで正解を連発していく。あっという間に全問正解し、優勝を飾った。しかし、あまりの速さに、他のチームは呆然とするばかりだった。
「田中くん! クイズはみんなで考えるものよ!」
斎藤さんが、冷静に田中の暴走を止めに入る。
「斎藤さんか。これもまた、効率化だ!」
「効率化と反則は違うわ! 宇宙拳・知恵の調律!」
斎藤は、田中の頭にそっと手を触れた。すると、田中の脳内から発せられていた情報の奔流が、穏やかな波へと変わっていく。そして、彼の暴走で検索エンジンに負荷がかかっていた会場のWi-Fi速度が、なぜか数倍に向上した。
田中の体が元の細身へと戻る。彼は自分がクイズに全問正解したことを覚えておらず、ただ斎藤の顔をきょとんと見つめていた。
「ご、ごめんなさい、斎藤さん…私、何か…?」
「ううん、大丈夫。でも、これからはちゃんと問題を聞いてから答えなさいね」
斎藤は優しく微笑んだ。そして、大会後に、田中がクイズ中にぶつかったことで、長年原因不明だった社内システムのバグがなぜか修正されていたことが判明し、情報システム部の面々は困惑しながらも感謝の意を述べた。クイズ大会は、知力勝負のはずが、思わぬ形で会社のシステム改善に貢献することになったのだった。