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50話「お墓参りとメッセージ」

週末。斎藤さんは、実家へと向かっていた。年に一度のおばあちゃんのお墓参りだ。おばあちゃんは、生前、とてもユニークな人で、いつも斎藤さんに「お前には宇宙の力が宿っている。困った時は、心の奥底から宇宙拳を放つのじゃ」と冗談めかして言っていた。もちろん、それは単なるおばあちゃんの口癖で、斎藤さんも本気にしていたわけではない。しかし、大人になって、田中と出会い、彼が騒動を起こすたびに無意識に力を制御するようになってから、彼女はふと考えることがあった。「宇宙拳」という言葉と、田中が持つ奇妙な力。何か関係があるのだろうか、と。


そんなことを考えながら、斎藤さんは墓前に立った。ふと、風が強く吹き始め、供えていた花が倒れそうになる。手を伸ばすが間に合わない。その時、どこからともなくドォォォォォン!という地響きが聞こえた。


斎藤さんは驚き、周囲を見渡したが、特におかしなことはない。しかし、その地響きの直後、倒れかけた花がふわりと宙に浮き、ゆっくりと元の位置に戻った。そして、花瓶の水が、まるで生きているかのように揺らめき、枯れかけた花びらが少しだけ鮮やかになったように見えた。


「え…?」


斎藤さんは思わず目を見開いた。これは、田中が力を暴走させた時に起こる現象に似ている。でも、なぜこんな場所で?まさか、この力をコントロールしているのは、私のおばあちゃん…?そんな非科学的な考えが頭をよぎり、斎藤さんの心臓は、不思議な期待と戸惑いに波打ち始めた。


その時、遠くから声が聞こえた。


「パードゥン…?」


斎藤さんは声のする方を見たが、そこには何もいない。しかし、その声が、どうにも田中の声に似ているような気がしてならなかった。彼女は、もしかしたら田中も、自分と同じような、いや、自分よりもはるかに強大な「宇宙の力」を持っているのではないか、と漠然と感じ始めた。そして、その力が無意識のうちに発動し、今、ここにいる自分に影響を与えたのではないか、と。


(田中くんの力と、私の宇宙拳…?まさか、本当に…?)


斎藤さんは、おばあちゃんが言っていた「宇宙の力」と、田中の「パードゥン」という謎の力の関連性を、深く考えるようになった。自分自身の力が、田中が暴走した後に発動する「宇宙拳」という現象であること。そして、今回、田中の姿が見えないにもかかわらず、彼の地響きと共に奇妙な現象が起こったこと。これらは偶然なのだろうか?


その瞬間、再びドォォォォォン!という地響きがすぐ近くで響き渡った。斎藤さんは驚いて飛び上がった。そして、地響きが止んだ後、先ほどよりもさらに強く、墓石からピカピカの光が放たれた。まるで磨き上げたかのように輝く墓石を見て、斎藤さんは目を凝らした。墓石の隅に、なぜか小さなメッセージが刻まれていた。


「ばあちゃんより。たまには墓参りに来い。あと、男を見る目は養っとけよ。な。」


斎藤さんは、そのメッセージを見て、顔を赤くして固まった。墓石から放たれる輝きと、亡くなったおばあちゃんからの、まさかの「説教」と「忠告」に、彼女は思わずずっこけそうになった。


「まったく、おばあちゃんったら…!宇宙拳は一体どこから来てるのよ!」


斎藤さんの墓参りは、まさかの「宇宙の謎と、天国からの余計なお世話」という、驚きの成果をもたらしたのだった。

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