表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/90

エピソードゼロ 6話「運命の入社」

パードゥン田中のプレゼンが続く中、突然、面接室の扉が勢いよく開いた。


「田中くん! やめなさい!」


そこに立っていたのは、他でもない斎藤薫だった。彼女は、田中の放つ異様なエネルギーを感じ取り、彼がこの会社で面接を受けていることを察知し、駆けつけたのだ。


「斎藤さんか! 我が社の未来を示しているのだ! これもまた、入社への貢献だ!」


パードゥン田中は、プレゼンを止めずに、斎藤に言い放った。斎藤は冷静に、しかし鋭く田中の元へ進み出る。


「貢献と暴走は違うわ! 宇宙拳・調和の光!」


斎藤は、大きく両手を広げ、田中の巨大な体にそっと触れた。彼女の掌から放たれる柔らかな光が、田中の暴走で過剰に膨れ上がっていた生命エネルギーを、まるで優しく包み込むかのように吸収していく。そして、その光が面接室全体に広がり、壊れかけていた椅子や揺れていたテーブルが、まるで時間が巻き戻るかのように元通りになっていった。同時に、パードゥン田中が語り続けていた超人的な情報も、斎藤の「調和」の光によって、面接官たちが理解できる最適な情報量へと調整され、彼らの頭の中にスッと入っていくのだった。


田中の体がゆっくりと元のサイズに戻っていく。彼は自分が面接で何をしていたのか覚えておらず、ただ呆然と斎藤と、そして面接官たちを見つめていた。


「さ、斎藤さん…私、また…」


斎藤は微笑み、人事部長に深々と頭を下げた。


「申し訳ありません、人事部長。彼、少し緊張しすぎたようです」


人事部長は、未だ口を開けたまま、田中の元の姿と斎藤の冷静な対応を交互に見ていた。しかし、彼の顔には、先ほどの驚愕の表情とは異なる、ある種の「確信」のようなものが浮かんでいた。


「いや…とんでもない。素晴らしいプレゼンテーションでしたよ、田中さん」


人事部長はそう言うと、他の面接官たちと顔を見合わせた。彼らは皆、深く頷いている。


「あの…私の面接は…」


田中がおずおずと尋ねると、人事部長は笑顔で答えた。


「合格です。田中さんの潜在能力、そして、それを引き出し、導いてくれる斎藤さんの存在…これこそが、我が社が求める『新たな風』だと確信しました」


実は、人事部長は長年原因不明の頭痛に悩まされていたが、パードゥン田中のプレゼン中のエネルギーに触れたことで、その頭痛が完全に治癒していたのだ。そして、斎藤の「調和」の光が、面接室の空気を浄化し、彼らの思考をクリアにしたことも、彼らには不思議と心地よく感じられた。


こうして、田中と斎藤は、同じ会社への入社を果たした。田中の制御不能な力と、斎藤の調和の宇宙拳。二人のデコボコな個性が、これからの会社生活でどのようなドタバタと奇跡を生み出すのか、誰も予想できなかった。しかし、一つだけ確かなことは、彼らが共に歩む道は、決して「ごく普通」では終わらないだろうということだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ