エピソードゼロ 6話「運命の入社」
パードゥン田中のプレゼンが続く中、突然、面接室の扉が勢いよく開いた。
「田中くん! やめなさい!」
そこに立っていたのは、他でもない斎藤薫だった。彼女は、田中の放つ異様なエネルギーを感じ取り、彼がこの会社で面接を受けていることを察知し、駆けつけたのだ。
「斎藤さんか! 我が社の未来を示しているのだ! これもまた、入社への貢献だ!」
パードゥン田中は、プレゼンを止めずに、斎藤に言い放った。斎藤は冷静に、しかし鋭く田中の元へ進み出る。
「貢献と暴走は違うわ! 宇宙拳・調和の光!」
斎藤は、大きく両手を広げ、田中の巨大な体にそっと触れた。彼女の掌から放たれる柔らかな光が、田中の暴走で過剰に膨れ上がっていた生命エネルギーを、まるで優しく包み込むかのように吸収していく。そして、その光が面接室全体に広がり、壊れかけていた椅子や揺れていたテーブルが、まるで時間が巻き戻るかのように元通りになっていった。同時に、パードゥン田中が語り続けていた超人的な情報も、斎藤の「調和」の光によって、面接官たちが理解できる最適な情報量へと調整され、彼らの頭の中にスッと入っていくのだった。
田中の体がゆっくりと元のサイズに戻っていく。彼は自分が面接で何をしていたのか覚えておらず、ただ呆然と斎藤と、そして面接官たちを見つめていた。
「さ、斎藤さん…私、また…」
斎藤は微笑み、人事部長に深々と頭を下げた。
「申し訳ありません、人事部長。彼、少し緊張しすぎたようです」
人事部長は、未だ口を開けたまま、田中の元の姿と斎藤の冷静な対応を交互に見ていた。しかし、彼の顔には、先ほどの驚愕の表情とは異なる、ある種の「確信」のようなものが浮かんでいた。
「いや…とんでもない。素晴らしいプレゼンテーションでしたよ、田中さん」
人事部長はそう言うと、他の面接官たちと顔を見合わせた。彼らは皆、深く頷いている。
「あの…私の面接は…」
田中がおずおずと尋ねると、人事部長は笑顔で答えた。
「合格です。田中さんの潜在能力、そして、それを引き出し、導いてくれる斎藤さんの存在…これこそが、我が社が求める『新たな風』だと確信しました」
実は、人事部長は長年原因不明の頭痛に悩まされていたが、パードゥン田中のプレゼン中のエネルギーに触れたことで、その頭痛が完全に治癒していたのだ。そして、斎藤の「調和」の光が、面接室の空気を浄化し、彼らの思考をクリアにしたことも、彼らには不思議と心地よく感じられた。
こうして、田中と斎藤は、同じ会社への入社を果たした。田中の制御不能な力と、斎藤の調和の宇宙拳。二人のデコボコな個性が、これからの会社生活でどのようなドタバタと奇跡を生み出すのか、誰も予想できなかった。しかし、一つだけ確かなことは、彼らが共に歩む道は、決して「ごく普通」では終わらないだろうということだった。




