エピソードゼロ 2話「隠された力の目覚め」
小学校高学年になったある日。田中は、いじめっ子たちに囲まれていた。臆病な性格ゆえ、彼はいつも標的になっていた。いじめっ子の一人が、田中の大切なノートを取り上げ、破り捨てようとした。
「やめて…! それだけは…!」
田中の心臓は激しく波打ち、全身が震え始めた。彼の内側で、何かがプツンと切れる音がした。その時、彼の口から、無意識に言葉が漏れた。
「パードゥン…?」
次の瞬間、彼の細身の体が、まるで風船が膨らむかのようにみるみるうちに巨大化していく。服が破れ、筋肉が盛り上がり、田中は身長2メートルを超える巨漢へと変貌した。その目には、先ほどまでの怯えの色は微塵もなく、ぎらぎらとした光が宿っていた。
「何…だ…こいつ…!?」
いじめっ子たちは、田中のあまりの変貌ぶりに恐れおののき、逃げ去った。しかし、その場に残された田中は、自分が何をしたのか分からず、ただ呆然と立ち尽くしていた。彼の体からは、何とも言えない強大なエネルギーが脈打っているのが感じられた。
その時、斎藤が駆け寄ってきた。彼女は、田中の異変を感じ取っていたのだ。
「田中くん…! あなた、今…すごい力が…!」
斎藤は驚きながらも、田中の巨大な体にそっと手を触れた。すると、田中の荒々しいエネルギーが、斎藤の手を通して、まるで海に吸い込まれるかのように穏やかに鎮まっていく。そして、田中の体はゆっくりと元の細身へと戻っていった。
「さ、斎藤さん…僕、何を…?」
斎藤は、田中の目を見て、確信した。
「田中くん…あなたの力は、私が知っている宇宙のエネルギーと、とてもよく似ているわ。でも、まだコントロールできていないみたい…」
斎藤は、幼い頃に祖母が語っていた言葉を思い出した。「宇宙の調和が乱れる時、それを正そうとする力が、予期せぬ形で現れることがある」と。そして、田中が「パードゥン?」と発した瞬間に体内で起こったのは、まさしく宇宙の根源的な生命エネルギーの過剰供給だった。田中の家系に代々受け継がれてきた「過剰適応」の体質は、実は宇宙のエネルギーと深く結びついていたのだ。彼の「パードゥン?」という言葉は、その扉を開く、偶然の「言霊」だった。
斎藤は、幼い頃に見た、田中から放たれた微かな「キラキラ」の正体を理解した。それは、彼の内側に眠る、制御不能なほどの生命エネルギーの輝きだったのだ。




