22話「白熱の社内ゴルフコンペ」
年に一度の社内ゴルフコンペは、接待ゴルフの練習も兼ねて、多くの社員が参加する。しかし、ゴルフ経験のない田中は、空振りばかりでボールが全く飛ばない。周りの社員からも嘲笑の声が漏れる。
「おい田中、お前は本当にゴルフの才能がないな! そのままじゃ一日中ここにいることになるぞ!」
先輩社員の容赦ない言葉が、ゴルフコースに響き渡る。田中の顔が真っ赤になり、悔しさで唇を噛みしめる。
「パードゥン?」
その瞬間、ドォォォン!と地響きが起こり、田中は「パードゥン田中」へと変貌した。彼の巨体が、フェアウェイを覆い尽くすかのようにそびえ立つ。
「才能がない? とんでもない! 最高のショットを、今ここに!」
パードゥン田中は、ゴルフボールを手に取ると、まるで石ころのように軽々と投げ上げた。そして、ゴルフクラブを握りしめると、スイングと同時に、まるで竜巻のような風を発生させ、ゴルフボールを宇宙の彼方まで飛ばした。そのあまりの飛距離に、社員たちは皆、呆然と立ち尽くすばかりだった。
「すごい…! ボールが視界から消えたぞ…!」
「これじゃあ、ホールインワンどころじゃない…!」
その最中、パードゥン田中がスイングの際に放った微細なエネルギーで、なぜかゴルフコースの芝生が劇的に青々と活性化し、花々が咲き乱れていた。
「田中くん! ボールをどこまで飛ばしてるのよ!」
斎藤さんが、田中の暴走を止めるべくコースへと駆け込む。
「斎藤さんか! これもまた、究極の飛距離だ! ゴルフの歴史を塗り替えるのだ!」
「歴史を塗り替えるのはいいけど、ボールを無くしちゃダメでしょ! 宇宙拳・軌道の修正!」
斎藤は、田中の手に触れ、その破壊的なスイング衝動を穏やかに鎮めていく。そして、彼女の指先から放たれる光が、パードゥン田中が放ったボールの軌道を捕捉し、まるで磁石に吸い寄せられるかのように、完璧な軌道を描いてカップへと吸い込まれていく。見事なホールインワンだった。そのあまりの正確さに、社員たちは皆、息をのんだ。
田中の体が元のサイズに戻り、彼は自分が何をしていたのか覚えておらず、ただ斎藤の顔をきょとんと見つめていた。
「さ、斎藤さん…私、また…」
「まったく、ハラハラさせるんだから。でも、おかげで最高のホールインワンが見られたわね。それに…」
斎藤は微笑んだ。そして、ゴルフコンペ後、田中がスイングしたことで、なぜかゴルフコースの長年の排水問題が解決されており、さらに社員たちのストレスレベルが劇的に低下したことが判明した。ゴルフコンペは、まさかの「環境改善とメンタルヘルス向上」という、驚きの成果をもたらしたのだった。




