20話「魅惑の社内イベント(ハロウィンパーティー)」
年に一度の社内ハロウィンパーティーは、社員たちが仮装して楽しむお祭り騒ぎだ。しかし、普段から目立つことが苦手な田中は、地味な幽霊の仮装で隅っこに隠れていた。そんな彼に、ゲームの参加を促す声がかかる。
「田中さん、もっと楽しんでくださいよ! 仮装の意味がないじゃないですか!」
陽気な社員の声に、田中はますます身を縮める。そして、誤ってジュースを派手にこぼしてしまい、周囲の注目を浴びてしまう。
「パードゥン?」
その瞬間、ドォォォン!と轟音が響き渡り、田中は「パードゥン田中」へと変貌した。彼の巨大な体が、会場の装飾を破壊し始める。
「地味? とんでもない! 最高のパーティーを、今ここに!」
パードゥン田中は、自らの体をキャンバスとして、周囲の装飾を瞬時に吸収し、全身をきらびやかなパーティー会場へと変貌させた。彼の頭からはミラーボールが回転し、手からはレーザービームが放たれ、体からは音楽が鳴り響く。彼は巨大なマイクを手に、DJのように会場を盛り上げ始め、社員たちはその予測不能な演出に驚きと興奮を隠せない。
「すごい! まさに歩くパーティー会場だ!」
「こんなハロウィンパーティー、初めてだ!」
その最中、パードゥン田中が放ったレーザービームが誤って当たってしまった社員の長年の花粉症がなぜか治癒されていた。
「田中くん! やりすぎよ! みんなびっくりしてるわ!」
斎藤さんが、田中の暴走を止めるべくパーティー会場へと駆け込む。
「斎藤さんか! これもまた、究極のエンターテイメントだ! 驚きと感動の提供だ!」
「エンターテイメントと暴走は違うわ! 宇宙拳・喜びの調和!」
斎藤は、田中の巨大な体に触れると、彼が放っていた過剰な興奮エネルギーを穏やかに鎮めていく。すると、田中の派手な演出が、より温かく、そして誰もが安心して楽しめるようなものへと変化する。彼の歌声は美しいハーモニーとなり、放たれる光は優しく会場を包み込み、社員たちは皆、心からの笑顔を見せた。
田中の体が元のサイズに戻り、彼は自分が何をしていたのか覚えておらず、ただ斎藤の顔をきょとんと見つめていた。
「さ、斎藤さん…私、また…」
「ううん、大丈夫。あなたのおかげで、最高のハロウィンパーティーになったわ。みんな楽しんでたもの。それに…」
斎藤は微笑んだ。そして、パーティー後、田中が放ったレーザービームで花粉症が治った社員が続出しただけでなく、彼の演出によって社員間の交流が深まり、新たな友情が芽生えたことが判明した。ハロウィンパーティーは、まさかの「健康増進と人間関係構築」という、予想外の成果をもたらしたのだった。




