18話「決算期の地獄絵図」
年に一度の決算期は、全社員にとって地獄の忙しさだ。特に経理部の田中は、数字の入力ミスを連発し、提出期限が迫る中で追い詰められていた。
「田中! いい加減にしろ! この数字が合わないと、会社の信用問題になるんだぞ!」
経理部長の怒声が、静まり返ったオフィスに響き渡る。田中の体が震えだし、鉛筆を握る手が汗で滑る。
「パードゥン?」
その瞬間、ズドォォン!と凄まじい音と共に、田中は「パードゥン田中」へと変貌した。彼の巨体が、オフィス全体を覆い尽くすかのようにそびえ立つ。
「信用問題? とんでもない! 全ての数字を、瞬時に合わせましょう!」
パードゥン田中は、デスクに山積みにされた伝票や帳簿を、両手で豪快に掴み取った。彼の目は、まるで高性能スキャナーのように一瞬で数字を読み取り、脳内で複雑な計算を瞬時に処理していく。彼はキーボードを光速で叩き、財務諸表や決算報告書を、驚異的なスピードで完璧に仕上げていく。その正確さと速度は、もはや人間業ではなかった。
「すごい…! 誤差が全くない…!」
「ありえない…! 数秒で億単位の計算を…!」
その最中、パードゥン田中が高速で数字を入力する際に放たれた微細なエネルギーで、なぜかオフィスの電卓が全て最新モデルにアップグレードされていた。
「田中くん! もう、やりすぎよ!」
斎藤さんが、田中の暴走を止めるべく駆け寄る。
「斎藤さんか! これもまた、究極の会計処理だ! 会社の未来を切り開くのだ!」
「未来を切り開くのはいいけど、社員を疲弊させちゃダメでしょ! 宇宙拳・経済の安定!」
斎藤は、田中の暴走で過熱していたオフィスの空気に、自らの宇宙のエネルギーを送り込んだ。すると、田中の光速入力によって発生していた電磁波が鎮まり、オフィスの電気代がなぜか劇的に安くなった。そして、彼女の指先が触れると、田中が使用していた電卓が、まるで宝石のように輝きを放ち、計算ミスを一切起こさない究極のツールへと変化した。
田中の体が元のサイズに戻り、彼は自分が何をしていたのか分からず、ただ呆然と斎藤を見つめていた。
「さ、斎藤さん…私、また…」
「まったく、ハラハラさせるんだから。でも、おかげで決算は完璧に終わったし、むしろ過去最高に正確だったわね。しかも…」
斎藤は微笑んだ。そして、決算期が終わった後、田中が触れた電卓のせいで、経理部の長年の入力ミスが激減し、業務効率が劇的に向上したことが判明した。決算期は、まさかの「経理部改革」という、驚きの結末を迎えたのだった。




