15話「熾烈な営業プレゼン大会」
年に一度の社内営業プレゼン大会は、若手社員の登竜門。しかし、極度のあがり症である田中は、自分の番が近づくにつれて顔面蒼白になっていた。いざ壇上に立つと、彼の声は震え、用意した原稿も頭から真っ白になる。
「田中、お前、何を言ってるんだ! 全然聞き取れないぞ!」
審査員である役員の厳しい声が響き渡る。田中の膝がガクガクと震え出す。
「パードゥン?」
その瞬間、ズドォォン!と轟音が響き、田中は「パードゥン田中」へと変貌した。舞台の床がミシミシと音を立てる。
「聞き取れない? とんでもない! 最高のプレゼンテーションを、今ここに!」
パードゥン田中は、巨大な体を揺らしながら、圧倒的な声量と身振り手振りでプレゼンテーションを始めた。彼の声は会場の隅々まで響き渡り、彼の言葉はまるで映像のように社員たちの脳裏に直接語りかける。彼は、自社の製品の魅力を、市場の動向、競合他社の分析、未来のビジョンまで、ありとあらゆるデータを駆使して語り尽くした。そのあまりの説得力に、社員たちは皆、製品の虜になっていく。
「すごい…! あの製品がこんなに魅力的なのか…!」
「なぜか、購買意欲が湧いてきたぞ…!」
その最中、パードゥン田中がプレゼン中に興奮して腕を振り下ろした際、その衝撃で会場のプロジェクターの調子がなぜか良くなり、映像が格段に鮮明になった。
「田中くん! プレゼンは聴衆との対話よ!」
斎藤さんが、田中の暴走を止めるべく壇上へと駆け上がる。
「斎藤さんか! これもまた、究極の顧客体験だ!」
「体験と暴走は違うわ! 宇宙拳・共感の波動!」
斎藤は、田中の暴走で一方的になっていたプレゼンの空気に、自らの宇宙のエネルギーを重ね合わせた。すると、田中の圧倒的なプレゼンが、まるで優しく語りかけるかのように、社員たちの心に響き渡る。彼の言葉に込められた情熱が、聴衆一人ひとりの感情と共鳴し、会場全体が一体感に包まれた。
田中の体が元のサイズに戻り、彼は自分が何をしていたのか覚えておらず、ただ斎藤の顔をきょとんと見つめていた。
「さ、斎藤さん…私、また…」
「ううん、大丈夫。あなたのおかげで、みんな製品の素晴らしさを深く理解できたわ。最高のプレゼンだったわね」
斎藤は優しく微笑んだ。そして、プレゼン大会後、パードゥン田中のプレゼンに感化された社員から、製品に関する画期的な改善案が多数提出され、会社の売上向上に大きく貢献した。プレゼン大会は、まさかの「製品開発会議」という、前代未聞の結末を迎えたのだった。




