12話「異色の社内サークル活動(読書会編)」
穏やかな雰囲気で行われるはずの社内読書会。今回はビジネス書を読むことになっていたが、普段から本を読む習慣のない田中は、読むべきページ数が多すぎることにうんざりしていた。
「田中さん、感想をお願いします。読んでこられたんですよね?」
司会役の先輩社員が、田中を指名する。田中はしどろもどろになり、読書会に参加している社員たちの白い目に耐えられなくなる。
「パードゥン?」
彼の体が、ゴゴゴ…と音を立てて膨張し始める。眼鏡が砕け散り、彼の着ていた服が破れる。巨大な「パードゥン田中」が、そこに立っていた。
「読書、この通りです! 全ての情報を、今ここに!」
パードゥン田中は、読書会のテーブルにあったビジネス書を全て鷲掴みにすると、まるでスキャナーのように一瞬で内容を読み込んだ。そして、そのビジネス書の要点、課題点、そして未来への応用策までを、超高速で語り始めた。彼の声はまるで何人もの人間が同時に話しているかのように聞こえ、その情報量に社員たちは混乱するばかりだった。
「すごい…けど、情報量が多すぎてついていけない…!」
「本の内容全部言ってるぞ…!」
その最中、パードゥン田中が興奮して手を振り上げた際、その手のひらから微細な光が放たれ、その光を浴びた社員の長年の眼精疲労がなぜか解消されていた。
「田中くん! 静かにしなさい!」
斎藤さんが、冷静に、しかし力強く田中の暴走を止めに入る。
「斎藤さんか! 我が知識の開示を邪魔する気か!」
「知識は共有するものだけど、みんなで理解しなきゃ意味がないわ! 宇宙拳・言葉の光!」
斎藤は、田中の口元にそっと手をかざした。すると、田中の超高速な言葉が、まるでスローモーションのように穏やかな速度になり、誰もが理解できる明瞭な言葉に変化していく。彼の語っていたビジネス書の要点も、斎藤の声と重なり合い、まるで心に直接語りかけるかのように、社員たちの心に響き渡る。
田中の体が元のサイズに戻り、彼は自分が読書会で暴走していたことに気づき、顔を真っ赤にした。
「さ、斎藤さん…私、また迷惑を…」
「ううん、大丈夫。あなたのおかげで、みんな読書会の本の内容を完璧に理解できたわ。素晴らしい発表だったわね」
斎藤は優しく微笑んだ。そして、読書会後、田中が浴びせた光によって社員たちの眼精疲労が治っただけでなく、彼らが読んだビジネス書のアイデアが、具体的な業務改善提案として多数提出されたことが判明した。読書会は、まさかの「業務改善コンテスト」という、画期的なイベントへと変貌を遂げたのだった。




