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10話「忘年会」

一年の労をねぎらう忘年会。各部署が趣向を凝らした出し物を披露する中、田中の部署の番が来た。彼は渋々、他の社員に連れられ、舞台に上がる。しかし、準備不足と彼の極度の緊張から、出し物は見るも無残な大失敗に終わった。会場からは、痛々しい沈黙と、時折聞こえるヒソヒソ声が田中の心をえぐった。


「なんだあれ…部長の顔、青ざめてるぞ…」


その声が、田中のプライドを深く傷つけた。


「パードゥン?」


彼の体が、轟音と共に膨張し始めた。舞台上の幕が弾け飛び、スポットライトが揺れる。巨大な「パードゥン田中」が、そこに立っていた。


「私の出し物が失敗? とんでもない! 今こそ、真の出し物をお見せしましょう!」


パードゥン田中は、突然即興の漫才を始めた。しかし、その内容は会社の経営課題、部署間の連携不足、非効率な業務フローなど、普段誰もが口にできないような「闇」の部分を、絶妙なユーモアを交えて指摘するものだった。その的確すぎる分析と、巨体から繰り出されるダイナミックなジェスチャーに、会場は爆笑と戦慄が入り混じった奇妙な空気に包まれた。


「…なぜ、こんなに的確なんだ…」

「しかも、社長が笑ってるぞ…」


その最中、パードゥン田中が勢い余って殴りつけた専務が、「ぐあああ! あ、あれ…? 長年の偏頭痛が、なぜか治った…?」と呟いているのが聞こえた。


「田中くん! もういい加減にしなさい!」


斎藤さんが、冷静に、しかし鋭くツッコミを入れるべく舞台に上がる。


「斎藤さんか! 我が社の未来を示しているのだ! これもまた、コンサルティングだ!」


「コンサルティングと暴走は違うわ! 宇宙拳・笑いの調和!」


斎藤は、田中の巨大な体に手を触れると、彼の放っていた膨大なエネルギーを、まるでコントのオチのように巧みに誘導した。すると、田中の渾身のギャグが、まるでコント番組のテロップのように会場のスクリーンに表示され、彼の動きがスローモーションで再生される。その絶妙な演出に、会場全体が再び大爆笑に包まれた。


田中の体が元のサイズに戻り、彼は自分が何をしていたのか全く覚えておらず、舞台上で戸惑っていた。


「さ、斎藤さん…私、何をして…?」


「ふふっ。最高の出し物だったわよ。おかげでみんな、お腹の底から笑えたもの」


斎藤は優しく微笑んだ。そして、忘年会の後、田中の漫才の内容が翌日の役員会議の議題となり、会社の経営改善に大きく貢献したことが判明した。忘年会は、まさかの「業務改善会議」という、前代未聞の結末を迎えたのだった。

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