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えーと、ここかな。
看板も表札も無いけれど、この住所で合ってるはず。
この普通の一軒家が"キュみみ会"総本部。
リーダーの眼鏡さんに、念のため場所を教えてもらっておいて正解でした。
何せデカい組織なので全員集合は無理ですが、
幹部会議などの会合はここで開かれているそうです。
それでは、おじゃましますよ。
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案内されたのは事務室っぽい書類だらけの部屋。
中で忙しそうに書類仕事している眼鏡さんに今回の件を相談。
予想通り、イルレーシュさん狙いの案件でした。
ニルシェ王都看板娘ランキング急上昇中、期待の新星イルレーシュさん。
もちろんお宿の新看板娘として大人気なのですが、
どうやら良からぬ企てを巡らす者たちからも注目されているようなのです。
これまでよりもガードが下がったことに気付いた、
ショセ様のお屋敷付きメイドさんの頃から目を付けていた連中やら、
素敵なメイド服姿で新看板娘している艶姿に引き寄せられた奴らが、
お宿から誘い出すために宅配お弁当を大量発注するという事案が発生。
隠密警護しているキュみみ会実働部隊が大忙しだそうです。
荒事にまで発展するケースは稀だそうですが、
そもそも不純な動機でお弁当を発注するようなヤツはファンの風上にも置けぬ。
ただ、ストーキング現場を直接押さえないと、
ちゃんとしたお客さんなのか不埒者なのかの判別が出来ず、
後手後手の対応しか出来ないのが歯痒い、と。
あー、てっきりキュみみ会内部のイルレーシュさんファンが、
会いたさゆえの暴走でお弁当大量発注とかやらかしてるのではと、
疑ってしまってごめんなさい。
それで、この件はショセ様は把握していますか。
「実力行使するような愚か者には積極的に対応出来ますが、ストーキング行為止まりの連中には有効な対策が取れず、ショセ様も心を痛めておられます」
ふむ、切れ者ショセ様もお手上げ、と。
弱りましたね、これ。
「ひとつだけ、効果的面の解決策が」
ほう、それは僥倖。
イルレーシュさんの平穏な暮らしのためにも、ぜひ早急な実行を。
「実は、ウェイトさんのご協力が不可欠なのですが……」
よござんす、他ならぬイルレーシュさんのためなら、
俺で良ければ何だってやりますとも。
あー、俺って腕っ節の方はまだまだ修行中の身ですので、
その辺は考慮していただければ……