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そんな感じで俺なりにソロ活動。
冒険者としては、採取やお使いなどの依頼を自分のペースで。
親しくなった冒険者仲間から一緒にひと狩りなどと誘われますが、
リルシェさんが戻ってくるまでは自重しますから。
ほら、俺って結構トラブル体質ですし。
いえ、ラッキースケベの方ではなく、荒事方面の。
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本日は自発的休養日。
いつものようにお宿の屋上テラスで、のんびりと午後のお茶。
イルレーシュさんの煎れてくれるお茶はキュルミィさんとはまた違った美味さ。
まさに癒しの女神様ちっくお姉さま、ですな。
ぽかぽか陽気と美味しい午後のお茶のひと時、
極楽極楽……
「お手紙ですよ」
はい、ありがとうございます、イルレーシュさん。
よろしければ一服休憩、ご一緒しません?
「リルシェ様に叱られてしまいます」
いえいえ、お昼寝ひざまくらではなくて、ひなたぼっこで一服ですよ。
おっともしかして、ヴァンパイアさんは日光浴NGですか。
「いえ、私はしっかりと耐性がありますよ」
流石はイルレーシュさん、
お噂通りのハイスペックヴァンパイアさんなのですね。
「お手紙、よろしいのですか」
おっと、まずはそちらを。
……手紙はキュみみ会リーダーの眼鏡さんからでした。
はて、活動内容の近況報告かな。
えーと、どれどれ……
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『キュみみ会の応援活動はとても順調です』
『王都全域の隠密警備任務の方も、皆の頑張りで滞りなく』
『ショセ様に総合アドバイザーをお願いすることで、会の活動は飛躍的に活発化しました』
ショセ様もキュみみ会も頑張っているようですね。
うん、勢いのある組織がきちんとした後ろ盾を得たのならヨシッ、なのかな。
お忙しいのにハンパな仕事はしないところがショセ様らしいと言いますか。
『実は最近、組織内で少々問題が』
『"乙女の守り神"の先輩であるリルシェさんを"姐さん"と慕う勢力と、新看板娘のイルレーシュさんも応援したいという勢力と、今まで通りキュルミィさんメインで頑張りたいという勢力とが、活動方針を巡って議論に』
……知らんがな。
それこそ好きにすればよかろう案件でしょ。
まあ、リルシェさんに変なモーション掛けてきたら、
このウェイトが総力挙げてアレしちゃいますがね。
「お茶、どうぞ」
ありがとうございます。
イルレーシュさんは最近身の回りで何か変わったことはありませんか。
騒がしくなったりとか、妙な視線を感じたりとか。
「特には……」
「そういえば最近は宿の出前のお弁当が以前より盛況ですね」
それってもしかしてイルレーシュさんが配達を?
「はい、王都内M区画限定なのですが、この頃は『収納』バッグいっぱいのご注文をいただくようになって、これまでお届けしていた常連の方々をお待たせしてしまうほどの忙しさに」
おっと、そりゃいけませんな。
実は大量発注の方に少々心当たりがありますので、一度釘を刺してきますね。
元々はご年配の常連さんへのサービスとして始めたお弁当宅配ですし、
いかにお客さまとはいえ突然の新規大量発注は。
「急な飛び込みとかではなくきちんと事前発注してもらえれば大丈夫と、旦那様はおっしゃっておられますが」
「私の方は配達の方も問題無く……あら、もしかして……」
おや、やはり何か問題が。
「いえ、配達で路地裏などを通った際に、荒事が起きたばかりのような痕跡がたびたび見受けられます」
「それらしいことに関わったような人影は全く姿を見せませんが」
なるほど、荒事の気配が……
やはり、早めに釘を刺してきた方が良さそうですね。
「おひとりで大丈夫ですか」
「よろしければ私もお供に」
あー、大丈夫ですよ。
こう見えてそれなりに荒事慣れしてますし、
逃げ足だけは超一流冒険者のお墨付きですし。
それでは、行ってきます。