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チームモノカの皆さんは、嵐のように現れて、
さらりと去っていきました。
正確には、コレイカダンジョンに向かう途中でニルシェ王都に立ち寄って、
リルシェさんを置いてすぐに出立、でしたよ。
どうやらモノカさんからルスイさん手作りお菓子のことを聞いたマクラさんが、
どうしてもとおねだりして教えを乞いに向かった模様。
うん、頑張れ、ルスイさん……
でも良かったのですか、リルシェさん。
せっかくチームモノカの皆さんがそろって魔族領に来ていることですし、
一緒にコレイカダンジョンで大冒険とか。
「リルシェの居場所はここですよ」
「何せ、ちょっとでも目を離すと当たり前のように大惨事に巻き込まれちゃう困った相方がおりますので」
あー、申し訳ないです。
確かにアレは大惨事でしたね。
石油ストーブにニトロ入りガソリンを給油したと言いますか、
お子様向けキャラクターカレーにハバネロ汁をブッ掛けちゃったと言いますか。
「何だかよく分かりませんが、あまり危ないことに巻き込まれないでくださいね」
「クロ先生の秘薬でも癒せないような大事が世の中にはたくさんあるのですから」
はい、肝に銘じます。
それにしてもチームモノカの皆さんって、
噂に聞いていたのとはずいぶんと違いましたね。
確か、いたいけな召喚者の男の子たちが熱烈ハグの餌食に……
「とんでもない風評被害ですよぅ」
「うちのチームのみんなは、乙女の矜持を何よりも大切にしているのですっ」
「誰彼構わずハグしたり無節操にお姫様抱っこされたりなんて絶対に致しませんともっ」
えーと、それってつまり、
お眼鏡に適った子は犠牲になる可能性もありうる、と。
「……ケースバイケース、です」
はいはい、自己責任。
それで、ヨレン神官の件は、
完璧にミッションコンプリートってことでよろしいのですね。
「はい、問題解決、完全にクリアです」
「それで、ウェイトさんにはこちらをお預かりしてきました」
師匠からの手紙ですか。
油断すると先延ばしになっちゃうので、失礼して今すぐ読んじゃいますね。
えーと、どれどれ……
『嬢ちゃんとの結婚式、とっとと呼びに来ておくれ』
『わしが死んでからだと化けて出るぞい』
「何て書いてます?」
……まだまだ元気だから心配するなって。
「本当にお元気でしたね」
「ペットリモ村総合ギルドのメルマリカさんと同棲……同居なさってたり」
メルマリカさんって、受付嬢の!?
「はい、牛の獣人さんで素敵な癒し系お姉さんの」
「とっても包容力のある方で、ヨレン神官もすっかりらぶらぶ……仲良しでしたよ」
……羨ましくなんか無いですよ。
"天国は、あなたの望む場所にこそ存在する"
ですよね、師匠……