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どうしても計画を成功させたい一部のギルド関係者が手を尽くして、
『黒猫嵐工房』で研究中の技術検証器"コリジョン"を借り受けることに成功。
実動試験による検証が済み次第"コリジョン"は返却、
データを元にした量産器開発はギルド肝入りの大手魔導具工房が進める計画。
ただ困ったことに、ちょいと欲を出したのが若干名。
このアリシエラさんオリジナルの妖精能力併用型魔導具の技術は、
ひょっとしたら通信器以外にも応用出来るんじゃね、
みたいな後出しの思い付きで暴走しちゃったそうで。
本来は適度に妖精のチカラを注ぐだけだったところを、
妖精力の真髄とも言える歌でブーストすればどうなるのか。
魔導通信能力の上昇値次第では魔導兵器分野の革新の可能性ともなりうる、と。
で、試験の手順をこっそり変更。
お望み通りフォルモルくんが歌で妖精力を注いだら、
はい、あの通りの大惨事。
結果、新型通信魔導具開発計画はその全てが廃棄となりました。
もちろん勝手に試験手順を変更したお偉いさんたちには厳しい処罰が。
試験器開発元である『黒猫嵐工房』と、
何も知らされていなかった俺とフォルモルくんには、
当然お咎め無し。
プロジェクトの開発責任者であるワーシュネイさんは、
手順変更を指示した連中とは無関係でしたが、
危険を予測していた上で故意に試験を止めなかったことを罪に問われました。
優秀な技術者であるがゆえ試験結果への興味を抑えられなかったという、
いわゆる学者馬鹿タイプですかね。
実は以前エルサニアでも魔導具関係で問題を起こして保護観察中だったそうで、
今後はより厳しい監視生活を送ることとなるそうです。
仕事の出来る真面目そうなお兄さんだったけど、
監獄結界での強制労働や脳内洗浄処理じゃなかったことを良しとすべしですね。
この件では妖精国とかなり揉めちゃったそうで、
ご面倒をお掛けしてしまったショセ様には、後で謝罪に行かねば。
「ショセ様、怒ってたというよりも、こんなのに何度も巻き決まれるウェイトさんに同情してたよ」
「まあ、妖精国とのやりとりでかなりすったもんだしてたみたいだし、慰めに行ってあげてね」
うん、フォルモルくんも災難だったね。
妖精国の方から何か言われなかった?
「俺はあの国のことはもうどうでもいいから」
「流石にニルシェと戦争になったら困るけど」
なんだかんだ言っても仲間想いだね。
「だって戦争になったら、せっかく凍結解除出来たギルド通帳のお金がまた使えなくなるかもしれないでしょ」
「そういう面倒ごとは俺と無関係なところでやってほしいよ」
……まあ戦争はともかく、とばっちりは御免被るよね。
「今回みたいな派手な依頼は、こっちに直接の被害が無ければ大歓迎だけどね」
「ウェイトさんも、お見舞い金とか口止め料とかいっぱいもらったでしょ」
しーっ、声が大きいよ。(小声)
どんなのが聞いてるかも分かんない冒険者ギルドの中で、
うかつにそういうことしゃべっちゃ駄目。(めっちゃ小声)
ってか、いい加減ユリージュナさんのお胸から出てきなさいって。
すみません、ユリージュナさん、
この子はまだまだ甘えん坊さんを卒業出来ていないのですよ。
「そっくりですよ、ウェイトさんと」
「出張中のリルシェさんに甘えられなくて寂しいのですね」
あー、否定はしませんけど、
俺は直接お胸に甘えたりは致しませんから。
「そうなんだ、もったいないね」
「このあいだ甘えさせてくれたわんこさんのお胸、凄くいい感じだったのに」
……ちょっとフォルモルくんっ、
その話し、詳しくっ。