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爆発、凄かったです。
ってか10mどころじゃなかったですけど。
フォルモルくんを引っ掴んで全力ダッシュ、
退避していた俺が吹っ飛ばされたのは、
たぶん30m以上離れた場所。
その後、気を失っていた俺が目を覚ましたのは、
フォルモルくんが変なとこでもぞもぞ動いてたせい。
「……男の胸に突っ込まれるなんて、最悪の気分」
うん、気が合うね。
やっぱ胸は乙女に限るよ。
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地面にどデカいクレーターを開けちゃうようなデンジャラス魔導具、
量産とか一般普及なんて出来るわけもなく、
当然のごとく開発計画は頓挫。
ただ、開発の見直しとか一時中断ではなく完全にご破算になったのは、
もちろんあの爆発事故も一因ですが、
主因はギルド内の一部の連中の暴走でした。
今回の一般向け魔導通信器開発計画は、
冒険者ギルドや商業ギルドなどなど、複数のギルドが合同で立ち上げた計画。
召喚者たちが欲しがっている便利な個人向け情報端末、
要はスマホを、誰でも買える価格で売り出して世界中に普及させようぜ、
というめっちゃ壮大な計画。
中継とか基地局とか考えずに全部を端末任せでやっちゃおうってところが、
実に異世界っぽいですな。
ですが当然、開発は難航。
魔導通信可能な小型魔導具自体は、すでに実在しているそうです。
失われた古代文明の発掘品とか、
伝説の天才魔導具技師が残した遺産とかの、
国宝として厳重に管理されているような稀少品が。
実際にその手の希少魔導具が現場で活用される事例もあるようですね。
優秀な巡回司法官が犯罪捜査に役立てたり、
国家間の情報収集活動で極秘裏に使われていたり。
まあ、そういう伝説級魔導具が簡単には複製出来ない存在であることは、
流石に皆さん理解しているのです。
ギルドのお偉いさんたちが思い描いたのは、
現在、各ギルド間の通信業務で使われている設置式通信魔導具の小型化。
今の魔導技術の粋を集めた最新鋭大型魔導具を簡易型量産品へと落とし込んで、
世界中の皆さんへお手頃価格でお届け。
大変に有意義な計画ですし、お偉いさんたちが希望を抱くのも分かります。
ただ、開発に携わっている魔導具技師たちに言わせれば、
まさにシロウトのタワゴト。
現在稼働している設置式魔導通信器は、
製造の極めて困難な高位魔導回路を大量に必要とするもので、
その上、整備も維持もハンパ無い手間が掛かる難物。
そんなの小型化も量産もホイホイ出来るわけないのです。
ただ、一部の関係者は知っているのですよ。
小型化や量産のハードルを楽々飛び越えて、
すでに稼働している現物の存在を。
そう、アリシエラさん製の『Gふなずし』
チームモノカ関係者が所有している超高性能複合型魔導具。
リルシェさんたちは気軽に利用しておりますが、
実はアレ、国家機密級のヤバいブツ。
本来は開発したアリシエラさん自身も、とんでもなくVIPな存在なのです。
そんな風に尖った人材の宝庫であるチームモノカグループが、
関係各国からやいのやいの言われずに自由な活動を認められているのは、
国家を揺るがすような重大案件をさらりと解決しちゃうからこそ。
真っ直ぐ乙女モノカさんを慕って集まったある意味ユルい集団なのですが、
その行動理念と成した偉業の数々は、ガッチガチに筋金入りの正義一辺倒。
まさに触らぬ神に何とやらなアンタッチャブル集団、
それがチームモノカグループ。
だからこそアリシエラさんも、
遠慮無くトンデモ魔導具の開発に没頭出来ているわけで、
俺たちもその成果をほいほい普段使い出来ているのです。
というわけでアリシエラさん製魔導具の凄さは、
関係各国のお偉いさんや魔導具関係者界隈ではかなり有名。
一般の魔導具技師では複製どころか整備すら難しい超高性能魔導具の数々は、
まさに聖域的存在。
ただ、なまじその存在を知っているからこそ、欲も出ちゃうわけで。